1994 Fiscal Year Annual Research Report
誘導光散乱による高振動数フオノン発生システムの試作
Project/Area Number |
06554008
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木下 修一 大阪大学, 理学部, 助教授 (10112004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新倉 信治 スペクトラ, フィジックス社, 技術部長
兼松 康男 大阪大学, 理学部, 助手 (00211855)
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Keywords | 誘導光散乱 / フォノン生成 / フェムト秒レーザー / 光カー効果 |
Research Abstract |
本研究は、フェムト秒の時間幅を持つTi:サファイアレーザーを光源として、同期した2つの光パルスをつくり、あるいは、THzで振幅・位相変調されたパルスをつくり、誘導光散乱を用いて物質中にコヒーレントなフォノンをつくることが目的である。そのために、次の3つの方式を試してみることにした。1)分散のない回折格子対をもちいて光パルスを波長に分け、波長に分け、波長領域で変調をかけた後、再び、合成する、2)フェムト秒レーザーを光源として色素レーザーを励起する、3)フェムト秒レーザーの共振器内にプリズム対を2つ挿入し、2波長を同期発振させる。 本年度はこのうち、1)の方法を中心に研究を行った。具体的には、フェムト秒の光パルスが物質中を透過すると、屈折率の分散により一般にパルスの赤い方は進み、青い方は遅れ、時間幅は延びる。これをチャープというが、この効果は、通常逆分散特性を持つようなプリズム対を用いて補正することができる。光パルスがどのようにチャープしているかを観測するために、我々は、1)に示す分散のない回折格子対を使って直接観測する方法を開発した。すなわち、光パルスを波長で分散させた後でスリットで波長を選び、元の光パルスとの間で相互相関を測定することにより、チャープを観察する方法である。実際石英ガラスを通過させた光パルスについて調べてみたところ、スリットにより波長を選択したパルスの時間幅は広がるが、波長による時間のずれをはっきりと測定をすることができた。得られた結果は、屈折率の分散から計算した結果とかなり良い一致を見た。この実験では、光パルスを波長に分散させた後に幾何学的なフィルターにより時間幅を広げたことになり、最も簡単な波長整形の例である。現在、フィルターの形状を工夫し、様々な形状を持つ光パルスの整形の実験を行っているところである。 一方、コヒーレントフォノンの励起に用いる誘導光散乱の実験は、フェムト秒Ti:サファイアレーザーを用いて行い、液体を中心にいろいろな物質での実験を行った。その結果の主なものは、次の通りである。1)透明な物質での光カー効果に基づく誘導光散乱は、自然放出を用いた通常の光散乱の結果と広い振動数領域で完全に一致する。2)その結果、液体中に存在する揺らぎには分子の協同現象に基づくセントラルモードと呼ばれる揺らぎと分子の個々の揺らぎを反映した低振動数フォノンモード、分子内振動、電子雲の歪みによる4種があることが確認できた。現在、これらの歪みがガラスや蛋白質にも存在するかどうか、また、色素などの局在中心に与える影響などについて調べている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] S.Kinoshita: "Direct Comparison of femtosecond Fourier-transform Raman spectrum with spontaneous light scattering spectrum" Chem.Phys.Lett.(印刷中).
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[Publications] Y.Kai.: "Direct Comparison between femtosecond optical Kerr and high-resolution light scatteing measurements" J.Mol.lig.(印刷中).