1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06557087
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
大島 博幸 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (60013934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋葉 隆 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (70184108)
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Keywords | 慢性腎不全 / 溢水 / 高分子水吸収剤 / 水分出納 |
Research Abstract |
慢性透析患者は現在14万人をこえ、その年間粗死亡率は8%前後と、一般人口に比べ、予後不良群である。その死因は心不全、心筋梗塞、脳血管障害が約50%をしめ、溢水とそれに伴う高血圧、心血管障害が透析患者死亡の最大の原因である。 我々は血液透析患者286名の透析間体重増加、体重、尿量、飲水量を調査したところ、血液透析患者の飲水量は630±320ml/日と極度の飲水制限を受けているが、代謝水、食事内水分の摂取などにより透析間平均体重増加は体重の5.8±2.2%と、循環血漿量にも相当する水分過剰が生じていた。 この水分を間歇的な透析以外に、持続的に除去する治療法を開発する事は必須である。 我々は、オムツ等に使われている高分子水吸収剤を経口投与して、排便中の水排泄を増加させる可能性に着目した。我々は、(1)本法に適当な水吸収剤を開発し、(2)消化管内で吸水能を評価し、(3)その副作用の有無の検討し、臨床的に有用な治療方法であるか検討した。 日本触媒製の高分子水吸収剤6種類(H2、H-3、CS-7M、CSN-50、K4、K-25)の提供をうけた。経口投与される条件、水分吸収部位の環境を考慮し、人工胃酸処理の吸水能に与える影響を検討した。これらの水吸収剤は蒸留水と比較して人工胃液中では23-48%の吸水能の低下がみられた。ポリエチレングリコールに懸濁してラットに胃管投与した成績では、体重、摂食量、行動には異常を認めず、一過性の尿量減少、尿浸透圧上昇、排便量の増加をみた。投与24時間後の血液生化学所見は対照群(ポリエチレングリコール単独投与)と差がなく、剖検所見でも各臓器に変化をみなかった。 さらに、現在1日1回5日間の連続投与試験を施工中である。軽度の体重減少と便量の増加以外には上記の観察項目について対照群と大きな差は観察されていない。なお血清リン濃度の変化も観察されていない。 以上、高分子水吸収剤は、ラット単回において、安全に消化管からの水排泄を増加することが確認され、5日連日投与でも同様の効果が期待される。 今後、本剤は慢性毒性試験を経て、ヒト慢性腎不全患者の水分制限を緩和し、QOLを改善する治療薬となりうる可能性か期待できる。
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