1996 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト気道液中に見出したトリプターゼの内科的疾患治療への応用
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06557142
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Research Institution | THE UNIVERSITY OF TOKUSHIMA |
Principal Investigator |
安岡 劭 徳島大学, 医療技術短期大学部, 教授 (30035414)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岡 一良 帝人, 第二創薬研究所, 研究員
益田 賢一 帝人, 第二創薬研究所, 主任研究員
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Keywords | トリプシン様酵素 / 気道 / 痰 / 慢性気道疾患 / cDNA(遺伝子)のクローニング / 組換え酵素 |
Research Abstract |
1.ヒト気道トリプシン様酵素(HAT)の生化学的性質:ヒト粘液性痰からHATを単一にまで精製できた。HATは分子量約27kDaの単量体、基質特異性、プロテアーゼ阻害物質に対する態度からトリプシン型酵素であることが判明した。そのN末端の20アミノ酸残基配列は既知のいずれのタンパクのそれとも一致せず、新しいトリプシン様プロテアーゼであることが明らかになった。 2.HAT遺伝子(cDNA)構造:HATの細胞工学的手法でヒト気管DNAからHATのcDNAのcloningに成功し、その全塩基配列を明らかにした。このcDNAの塩基配列からHATの一次構造を推定した。その結果、HATには418アミノ酸残基からなる前駆体が存在し、これが活性化され成熟HATになると推定された。 3.組換えHATの生合成:2の研究に基づき得られた前駆体HAT遺伝子(全長cDNA)をバキュロウイルス/昆虫細胞での発現系の構築を試みた結果、昆虫細胞内に活性型HATの発現がみられた。 4.呼吸器系におけるHATの局在:Native HATに対する抗体を用いた免疫組織化学的研究で、HATは気道粘膜下の漿液腺細胞や粘膜下分泌腺の導管内の上皮細胞から気道粘膜面に分泌されると推定された。 HATの活性化機構:ヒト気管抽出液に前駆体HATが含まれていることが判明した。この前駆体はautocatalyticな機序で限定分解され、活性型(熟成HAT)に転換されることを示唆する成績が得られた。 HATの生物作用:インフルエンザウイルスはその表面タンパクであるヘマグチニン(HA)がトリプシン型のプロテアーゼの作用によりHA_1とHA_2に開裂することにより活性化され、感染性を獲得する。トリプシンを対照としてHATに本ウイルス活性化作用があるか否かを検索した。しかし、HATは単独ではHA分解作用を示さず、in vitroで本ウイスルの活性化作用を示さなかった。この問題は、HATの活性化機構をさらに解明し、再検討する必要があると考えている。HATの気道上皮細胞に対する増殖促進作用や障害作用、本細胞からの生理活性物質放出促進作用、を検討中である。HATが本細胞からサイトカインの放出を促進する成績を得ている。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 安岡劭: "ヒト喀痰から分離した気道トリプターゼと肥満細胞トリプターゼの性質の比較" 日本胸部疾患学会雑誌. 34. 678-684 (1996)
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[Publications] 土橋純子: "ヒト気道トリプターゼによるフィブリノーゲンの分解" 日本胸部疾患学会雑誌. 35. 49-55 (1997)
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[Publications] 小河原光正: "DPB患者の喀痰の分析、特にトリプターゼの分析" Therapeutic Res. 17. 1797-1799 (1996)
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[Publications] 寺尾紀子: "新生児吸引羊水中に存在するトリプターゼに関する研究" 徳島大学医療技術短期大学部紀要. 5. 99-107 (1995)
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[Publications] Toshiko Terao: "Biochemical analysis of airway aspirates of newborns" Tokushima J of Exp Med. 43. 69-77 (1996)
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[Publications] Susumu Yasuoka: "Purification,characterization and localization of a novel trypsin-like protease found in the human airway" Am J Respir Cell Mol Biol. 16(印刷中). (1997)