1995 Fiscal Year Annual Research Report
薬物輸送リポソームを細胞に膜融合させるペプチドの開発研究
Project/Area Number |
06558116
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Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
大木 和夫 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80115394)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大場 哲彦 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10250664)
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Keywords | 膜融合 / 担体リポソーム / ペプチド / 示差走査熱量測定 / ドラッグディリバリシステム / 標的細胞 / 相転移 / リン脂質 |
Research Abstract |
生物科学は細胞レベルでの生命現象の解明へ進み、医学領域でも疾患の発症機構の解明と治療法で細胞が標的となっており、薬物輸送リポソームを細胞に膜融合させることが研究されている。そこで、本研究では両者の膜融合を効果的に惹起させるペプチドを開発することを目的とし、明瞭な相転移を示すリポソームが膜融合したとき、脂質混合系のサーモグラムとなることを指標にして、示差走査熱量計により膜融合を測定した。細胞膜に作用して毒性を示すペプチドの蜂毒のメリチンのアミノ酸配列は疎水性が集中したアミノ末端側と塩基アミノ酸5残基が局存するカルボキシル末端からなる。メチリンは中性リン脂質のリポソームとは疎水的に相互作用し、酸性リン脂質のリポソームとは静電的に相互作用し、膜融合を誘導することを示した。次いで、インフルエンザ・ウィルスの膜融合蛋白質であるヘムアグルチニンの膜融合活性部位の20残基の配列類似ペプチドを合成したものを京都大学の高橋敞教授から提供を受けて、膜融合を調べた。静電的な相互作用による膜融合を見るために負電荷をもつグルタミン酸を導入したペプチドを一方のリポソームに添加し、正電荷をもつリジンを導入したペプチドを他方のリポソームに添加すると、脂質膜の相構造に依存せず膜融合が進行した。一方、導入されたグルタミン酸をpH5.0の条件でプロトン化させた疎水性相互作用による膜融合は、静電相互作用に比較してその効率は著しく低下していた。このとき、ホスファチジルコリンに加えてコレステロールを添加すると、膜融合の効率が上昇することが示された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 大木 和夫: "生体膜モデル系の熱測定による研究" 日本物理学会誌. 49. 369-373 (1994)
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[Publications] 安達 智宏: "Interdigituted Structure of Phospnolipid-Alcohul Systems Studied by X-ray Diffraction" Biophysical Journal. 68. 1850-1855 (1995)
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[Publications] 野澤 義則: "生体膜脂質の動的構造と情報交換" 油化学. 44. 721-729 (1995)
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[Publications] 小林 俊秀: "膜脂質の非対称分布" 細胞工学. 14. 1289-1295 (1995)
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[Publications] 高橋 浩: "Structural and Thermotropic Properties of Calcium-Dimyristoyl phosphatidic Acid Complexes at Acidic and Neutral pH Couditions" Biophysical Journal. 69. 1464-1472 (1995)
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[Publications] 大木 和夫: "籏野昌弘監修「新タンパク質応用工学」" フジ・テクノシステム, 950 (1996)