新しい人工関節材料-ハイドロキシアパタイト含有ガラス-チタン複合体の開発

1994 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 06559008
• Research Institution: Nagoya University
• Principal Investigator: 岩田 久 名古屋大学, 医学部, 教授 (90023796)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 伊藤 晴夫 東京厚生年金病院, 整形外科, 部長 ; 伴 清治 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (10159105) ; 丸野 重雄 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (60024204) ; 石黒 直樹 名古屋大学, 医学部, 助手 (20212871) ; 長谷川 幸治 名古屋大学, 医学部, 講師 (50208500)
• Keywords: 人工関節 / ハイドロキシアパタイト / チタン複合体 / ガラス / 骨・アパタイト界面 / 骨形成 / 骨吸収

Research Abstract

HAP-含有ガラス-チタン複合体を用いたこれまでの臨床的基礎実験は、1ヵ月-24ヵ月の期間のものであった。従って、もっと長期使用が必須条件とされる人工関節や歯科インプラントへの実用化に際しては、構成素材の改質実験の継続とともに、生体内での複雑な生物化学反応による腫瘍などの障害発生が、材質の化学反応だけでなく、物理的特性や構造、そして表面の性状にも左右されるという点にも注目して、形状や加工精度などの面での検討も充分行なう必要があると考えている。本研究材料は、金属を基材とする複合材料のため、紐造や易精度の詳細加工が可能で、生体骨の変形挙動に迫従し得る骨との接合部位の設定や最適形状設計の凡現化にも困難はない。また、生体用金属として生体とのなじみがよく、耐食性に優れ、為害性のない、チタン金属を用いるので、接合部の局部的破壊が生じても、良期的に安定して使用できるものと考えてよい。問題はガラスの生体内での安定性であるが、使用ガラスはバイオガラスとは全く異なるblolnertなもので、これまでの2カ年のデータでは生体内で極めて安定であった。また、各種酸性溶液、アルカリ溶液及び疑似体液によるイオン溶出実験では、化学的安定性の高いものであることが立証された。HAP含有ガラス-チタン生体適合性複合体は、特別な大型装置を必要とせず極めて簡便に作製でき、その表面は生体親和性の優れたものであることを、細胞培養法(骨芽細胞3T3EL)によって充分確かめている。
さらに、コーティング厚さは塗布回数を変えているだけで任意に調整でき、新生骨の形成に適した連続気孔(数μm-500μm)を有する多孔質層形成のための技法もわかってきた。
高齢化が進む社会状況の中で、老人の大腿骨顎部骨折、変形性股関節症、変形性膝関節症、慢性関節リウマチが大きな問題となってきている。すなわち、こうした症例に対し、骨セメント(PMMA)を使用しての人工股関節置換術、人工膝関節置換術が、全世界で一日約2000例おこなわれているといわれている。しかし長期的な臨床結果では、骨皮質の吸収が関節コンポーネントを固定した骨セメント-骨皮質の界面で生じ、必ずしも良好ではない。かかる状況において、HAP含有ガラス-チタン複合材料は、チタン合金の有する機械的強度をもち、骨セメントを使用することなく、直接生体骨と接合する各種人工関節を安価でかつ容易に作製可能である。金属インプラント、HAPプラズマ、スプレイ-チタン材料と比較して、生体親和性が著しく優れ、接合強度も著しく大きい。この生体適合性材料の、各種人工関節、骨修復などへの応用は、直接的には失われた生体材料の長期的な代替であり、豊かな人間社会の構築に大きく貢献するものと確信している。

Research Products

• [Publications] H.Iwata.: "Pharmacologic and Clinical Aspects of Intraarticular Injection of Hyaluronate." Clin.Orthop.289. 285-291 (1993)
• [Publications] T.Ishikawa,H.Itoh,S.Maruno,H.Iwata and S.Ban.: "Effect of Hydroxyapatite Containing Glass Coating on the Bonding between Bone and Titanium Implants." Clinical Materials. 14. 277-285 (1993)
• [Publications] Y.Sakakibara,T.Miura,H.Iwata and H.Itoh,et al.: "Effect of High-Molecular weight Sodium Hyaluronate on Immobilized Rabbit Knee." Clin.Orthop.299. 289-292 (1994)
• [Publications] N.Ishiguro,Y.Yabe,T.Shimizu,H.Iwata and T.Miura.: "Basic Fibroblast Growth Factor Has a Beneficial Effect on the Viability of Random Skin Flaps in Rats." Ann.Plast.Surg.32. 356-360 (1994)
• [Publications] S.Sasaki,H.Iwata,N.Ishiguro,K.Obata and T.Miura.: "Detection of Stromelysin in Synovial Fluid and Serum from Patients with Rheumatoid Arthritis and Osteoarthritis." Clinical rheumatology. 13. 228-233 (1994)
• [Publications] T.Yoshimi,T.Kikuchi,T.Obara,H.Itoh and H.Iwata,et al.: "Effect of High Molecular Weight Sodium Hyaluronate on Experimental Osteoarthrosis Induced by the Resection of Rabbit Anterior Cruciate Ligament." Clin.Orthop.298. 296-304 (1994)
• [Publications] S.Ban,S.Maruno,H.Iwata and H.Itoh.: "Calcium Phosphate Precipitation on the Surface of HA-G-Ti Composite under Phvsiological Conditon." J.Biomed.Mater.Res.28. 65-71 (1994)
• [Publications] S.Maruno,K.Imamura,T.Hanaichi,S.Ban,H.Iwata and H.Itoh.: "Characterization and Stability of Bioactivie HA-G-Ti Composite Materials and Bonding to Bone." Bioceramics. 7. 249-254 (1994)