1995 Fiscal Year Annual Research Report
言語行為の一般理論のための、発語内の力に関する基礎的・理論的研究
Project/Area Number |
06610001
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
山田 友幸 北海道大学, 文学部, 教授 (40166723)
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Keywords | 言語行為 / 発語内行為 / 発語内の力 / 内容 / 力 / 意味 / 意味論 / 語用論 |
Research Abstract |
最終年度にあたる今年度は、昨年度以来の行為の哲学と状況理論に関する最新の研究成果に関する調査を続けると同時に、言語行為の行為としての側面の研究を続行した。昨年度の研究において、発語内行為と発語媒介行為の比較によって、明示的遂行形式が存在するという意味で発語内行為が慣習的であるというJ.L.Austinの見解の正当性が確証されたことと、ウィトゲンシュタインの言語ゲームをめぐる考察からヒントを得ることによって、発語内の力を意味の関数と見るJ.R.Searle以来の言語行為の理論の公式見解が妥当でないと判断すべき強い根拠が得られたことから、本研究では、発語内行為の遂行に際して発話される文や発行される文書「これには必ずしも文といった単位に対応しないものも多い)の意味と、遂行される発語内行為との関係を、状況理論における条件付き制約(conditional constraints)として記述するという方針をとり、行為者のもつ権限や資格といった要因によって、発語内行為が不発に終わったり不適切となったりしうるという、もともとのオースティンの観点をもとり込んだ方向で、理論の基本的な枠組みを構想してきた。本研究においては、さらに行為の一般理論を参考にすることにより、発語内行為の行為としての側面を促えるためには、発語内行為が遂行されることによってどのような変化が状況にもたらされるのかを特徴づける事が必要であるという観点を導入した。こうした変化がもたらされる仕組みもまた条件付き制約として記述しうることから、本研究においては、語句の意味の発語内行為への寄与と発語内行為の慣習的な効力とが一貫した枠組みのもとで記述でされうることが示唆された。また、本研究ではこうした言語行為の諸特徴を扱うにあたって、発語内行為に特有の理論のようなものは必要ではなく、状況に関する一般理論が十分に一般的な枠組みとなりうることも示唆された。
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