1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610016
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Research Institution | Toyama University |
Principal Investigator |
磯部 彰 富山大学, 人文学部, 教授 (90143841)
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Keywords | 破邪詳弁 / 迷信 / 宗教結社 / 教匪 / 禁書政策 |
Research Abstract |
宝巻に対する士大夫の取り扱いは、『破邪群弁』の記載に見られるごとく、迷信及び宗教結社の秘儀としてあり、明末に皇妃皇親などが許容し参画してのを除けば、常に禁圧の対象であった。清代は王朝の転覆を図る教匪と密生な関係にあったため、ことに厳禁された。清末、官憲の取り締まりが弱体化し、外国勢力の乱入もあって一時清朝の王后らが教匪を利用したことと関連して宝巻が多数重印された。現存の宝巻刊本(鈔本)が明末・清初、そして清末光緒刊本が多いのは、かかる士大夫・王朝側の対宝巻・教匪への施政状況が如実に反映する。これに対し、下層社会、とりわけ郷村にあって宝巻は宗教行事の一環として行われ、表面には出さないが、村民の共同体意識を支えるものとしてありつづけた。民国時代、宝巻は故事系のものが残ったが、反迷信運動で都弔部の市民(主に知識人)はこれを離れ、郷村の老人層による宗教活動の中で、かろうじて生き延びている。しかし、現代改革と自由を叫ぶ中国指導層は宝巻が迷信を助長するものとして禁書化し、中国人が接し得ない情況を作っている。禁書対策は、清代よりつづいているわけである。
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