1994 Fiscal Year Annual Research Report
地球環境問題における「行為」と「意思決定」についての論理学的研究
Project/Area Number |
06610036
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
桑子 敏雄 東京工業大学, 工学部, 助教授 (30134422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 美佐子 東京工業大学, 工学部, 助手 (50242300)
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Keywords | 環境 / 環境論理 / 行為論 / 価値 / 配分の正義 / 権利 / 意思決定 / 身体論 |
Research Abstract |
本年度は、地球環境問題に深くかかわる倫理学的な問題、たとえば将来世代への責任の問題、配分の正義の問題、自然物の生存権の問題などの問題領域を整理し、それに関する諸研究を概観した。また行動原則を支える価値判断・要求の体系・選択の自由と結果のもつ公正さなどの基本概念を取り出し、行為論と決定理論との接点を採ることを行った。なお、研究にあたっては、定期的に週一度の研究会をもち、研究成果をもちより、それらを討議することによって考察を深めるという方法をとった。 行為論的アプローチにおいては、行為の状況として自然環境が人間の行為の構造の理解にどのように関わるかを中心に考察した。この考察の結果、環境と人間の相関関係を把握する四つの視点、(1)環境と身体の相関、(2)環境と行為の相関、(3)環境と価値の相関、(4)環境と歴史の相関の区別を明らかにした。 意思決定理論的アプローチにおいては、環境問題は個人と社会の選択と決定であると捉え、困難な選択や決定の場面を具体的に考察した。たとえばディレンマなどのような選択の困難に直面した人間がどのような判断をもち、どのような要因に影響され、何を最終的な根拠として選択をするかを検討した。さらに、そのような場面で考慮すべき様々な要素を考えていく中で、将来の哲学的な考察に用いられている概念だけでは、選択や意思決定の構造を説明するには不十分であることを指摘した。また、社会的決定の場面では、民主主義的な公平さ、公正さと各構成員の自由のもつ矛盾の意味を、A・センなどの研究をもとに吟味し、環境問題への適用を試みた。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 桑子敏雄: "生命論理における身体と所有" 東京工業大学人文論叢. 第20号. 131-140 (1995)
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[Publications] 桑子敏雄: "環境と人間の相関思想" 比較分化雑誌. 6号. 37-50 (1995)
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[Publications] 桑子敏雄: "別冊アエラ『哲学がわかる』" 朝日新聞社(寄稿). 30-31 (1995)
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[Publications] 鈴木美佐子: "行為とねじれた因果連鎖" 哲学論集(お茶の水女子大学哲学科編). 55-62 (1994)
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[Publications] 鈴木美佐子: "判断と行為-意志の弱さについて" 東京工業大学人文論叢. 第20号. 141-148 (1995)
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[Publications] 鈴木美佐子: "ディレンメマと二つの価値判断" 比較思想雑誌. 6号. 1-13 (1995)
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[Publications] 桑子敏雄(共著): "プラクティカル・エシックス研究" 千葉大学教養部倫理学研究室, 292 (1994)
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[Publications] 桑子敏雄(共著): "徳論理学の現代的意義" 慶應書房, 195 (1994)