1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610045
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Research Institution | Eichi University |
Principal Investigator |
松本 耿郎 英知大学, 文学部, 教授 (00159154)
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Keywords | 神秘主義 / 主観的意識の多層性 / 存在界の多層性 / 意識零度 / 存在零度 / 存在顕現 / メタ言語 / イラン石版本 |
Research Abstract |
本年度は研究プロジェクトの最終年度にあたり前年度の研究を継続し完了させるように努力した。研究活動は三分野に分けることができる。第一は井筒博士の残したアラビア語、ペルシア語の蔵書の調査。第二は井筒博士の学問研究上の方法の分析。第三は井筒博士の人となりについての研究である。 第一の蔵書の調査については、井筒博士の蔵書中にあるイラン石版本のなかから主要なもの九十冊を選び出し、これらを詳しく調査し研究報告書として「故井筒俊彦博士旧蔵イラン石版本目録」を印刷した。これらの石版本は前記の研究報告書の中に解説したとうり極めて貴重なものである。Shaykh Ahmad Ahsa'lのSharh al-Masha'lr(Tabrlz:s.n.,s.d.)、Mlr DamadのKltab al Sab'al-shidad(Tehran,l3l 7HQ.)など現在の我が国の図書館では見ることのできないイスラーム思想研究のうえで重要なものが含まれている。今回作成した研究報告書「故井筒俊彦博士旧蔵イラン石版本目録」は一般の研究者がこれらの蔵書を利用する際に極めて有益なもとなると信ずる。 第二の学問研究上の方法については井筒博士に古くから師事していた牧野信也氏、岩見隆氏から貴重な意見を聞くことができた。井筒博士の研究方法はいわゆるマルチメソドロジカル(多元的方法論)なものであり、異なる複数の方法論を随時適所に使用しながら、対象の本質を鮮やかに提示する。必ずしも特定の方法論に固執していない。このような研究方法をどのように評価するかが今後に残された課題であると思われる。この分野については今後とも研究を継続する予定である。 第三の人となりについては、S.H.Nasr博士やN.al-Attas博士など井筒博士の旧知の人々との文通により井筒博士についての記憶を収集することができた。しかしながら、井筒博士の人となりについてはまだ充分に情報が蓄積されていない。今回の研究を糸口にして、今後とも井筒博士の人と思想についての研究を継続してゆく計画である。
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Research Products
(2 results)