1996 Fiscal Year Annual Research Report
ジョン・ロック自由主義における「行為の自由」と「信教の自由」
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06610046
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Research Institution | Chubu University Women's College |
Principal Investigator |
下川 潔 中部大学女子短期大学, 英語英米文化学科, 教授 (40192116)
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Keywords | ジョン・ロック / 自由主義 / 行為の自由 / 信教の自由 / 寛容 |
Research Abstract |
今年度の研究実施計画で設定した課題は、(1)「信教の自由」についての哲学的考察を続行すること、(2)「信教の自由」、「行為の自由」、「法のもとでの世俗的自由」という三つの自由の相互の関連を考察すること、であった。(1)については、ロック『寛容に関する書簡』のラテン語原文、英訳、フランス語訳、日本語訳を比較し、テキストを綿密に解釈した。また、寛容についての第二、第三、第四書簡の議論や、『人間知性論』におけるロックの判断、意見、信仰に関する見解を詳しく考察した。この作業によって、寛容の根拠、したがって信教の自由の根拠は、従来よりも一層明確に把握されることになったと思う。ロック寛容論についての現代の様々な解釈にも、批判的検討を加えた。この成果は、研究報告書で提示する。第二の課題については、現在もまだ検討中であり論点を整理しなおす必要を感じている。しかし、これについても暫定的な解決の方向を研究報告書で示したい。 「信教の自由」と「行為の自由」は、ともに各人の知性の独立というロツクの基本主張と結びつく。私は、この知性の独立を論じたロックの作品「知性の正しい導き方について」(Of the Conduct of the Understanding)の翻訳と訳注を『中部大学女子短期大学紀要 言語文化研究』6号(1995年)以降において掲載してきた。その全訳は第9号(1998年)で完成する。各人の行為の自由の一形態としての「身体所有権」については、論文を『社会思想史研究』20号(1996年)に掲載した。今後、自由についての総合的な理解を深化させたうえで、ロック自由主義についての研究を著書『自由の政治哲学-ジョン・ロック自由主義の再検討』としてまとめたい。
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