1994 Fiscal Year Annual Research Report
感じられる自己と見える自己とは分離可能か:変換視研究からの検討
Project/Area Number |
06610064
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
吉村 浩一 金沢大学, 文学部, 助教授 (70135490)
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Keywords | 変換視 / 左右反転視 / 視覚の優位 / 感覚間相互作用 / 感覚-運動協応 / 触運動感覚 |
Research Abstract |
本研究では、感じられる自己と見える自己との正常な関係を変換視事態により破壊し、いわゆる“ボディ・イメージ"が自己受容感覚的自己と視覚的自己それぞれにどの程度依存したものであるかを明らかにすることを目的とした。 本年度の研究では、視野変換には左右反転視を用い、触・運動刺激としては手指に振動を与えることによって生じる受動的回転運動を用いた。この方法により、これまで左右反転視状況下では生じにくいとされていた“視覚の優位"を確認するデータが得られた。さらに、瞬時調光ガラスを導入したことによって、被験者の自発的開閉眼にたよることなく、視覚情報の有無の迅速な切り替えを管理・統制することができた。それにより、視覚情報が与えられていない状況でも、それまで見えていた左右反転視像に基づくボディ・イメージが自らの身体位置感覚として表象されることが明らかとなった。この結果は、15名の被験者中、約半数に認められた性質ではあるが、彼らにあっては、わずか15秒の視覚情報しかさらされなかったにもかかわらず、左右反転した手指の受動的運動感を報告したのである。 本実験結果は、左右反転視状況下での“視覚の優位"を示す、これまでで最も強力なデータとなった。そして、わずか15秒の左右反転視像の観察の後、視覚情報が遮蔽された状況で、触・自己受容感覚的な身体表象ではなく、“誤った"視覚像に基づいて自己が表象されるというデータは、さらに“視覚的自己"の支配力の強さを示すデータとなった。
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[Publications] Yoshimura,H.: "Visual capture under left‐right reversed vision" 金沢大学文学部論集行動科学科篇. 15. 1-12 (1995)
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[Publications] 吉村浩一: "ボディ・イメージの視覚性:左右反転視開始直後の手指の運動感" 名古屋大学環境医学研究所年報. 46(印刷中). (1995)