1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610072
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中道 正之 大阪大学, 人間科学部, 助手 (60183886)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
待田 昌二 大阪大学, 人間科学部, 教務職員 (00222290)
糸魚川 直祐 大阪大学, 人間科学部, 教授 (90027962)
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Keywords | ニホンザル / 子育て / 母子関係 / 母性 / 霊長類 |
Research Abstract |
ニホンザルの子育て戦略を解明するために、岡山県真庭郡勝山町で35年間にわたり継続研究されており、個体の血縁関係が完全に把握されている勝山ニホンザル集団を対象とした観察を行った。1994年4月から6月の出産期に子ザルを産んだ母ザルを、子ザルの月齢に応じて、観察した。子ザルの生後3カ月の間は、母ザルは子ザルに対して抱く、運ぶ、毛づくろいするなどの親和的行動に終始したが、それ以降になると、母ザルから子ザルへの拒否的行動や攻撃行動が表出されるようになった。すなわち、授乳を求める子ザルを避けたり手で払ったりする行動である。このような母ザルから子ザルへの拒否的・攻撃的行動の生起と並行して子ザルが母ザルから離れて過ごす時間も増加し始めた。これらの傾向が最も顕著に見られたのは、給餌場面であった。他方、休息場面や移動場面でも同様の傾向は確認できたが、比較的緩やかなものであった。すなわち、休息場面や移動場面での母ザルから子ザルへの拒否的・攻撃的行動は少なく、特に、移動場面では、生後10カ月を越える時点でも、子ザルは母ザルの背中あるいは腹部にしがみついて運ばれており、このような事態での母ザルの拒否的行動はほとんど観察されなかった。これらの事実は、母ザルが場面に応じて子ザルへの対応を変容させていることを示している。尚、母ザルの出産歴、母ザルの優劣順位、子ザルの性差などの観点からの分析は現在進行中である。 ニホンザルの子育て戦略と比較するために、同じマカカ属であるカニクイザル、さらに、より下等な原猿類に属するワオキツネザルの子育てについても、観察が並行して行われた。ニホンザルやカニクイザルに比べてかなり下等なワオキツネザルでも、これら2種の母ザルと同等の豊かな母性を持っていることが明らかとなり、本研究は霊長類全般にわたって共通する母性の姿を描き出しつつある。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Nakamichi,M.et al.,: "Behavior and serum cortisol in infant Japanese monkeys following maternal separation and grouping of infants." Current Primatology,Vol.II Social Development,Learning and Rehaviow. 257-263 (1994)
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[Publications] Nakamichi,M.et al.,: "Interactions among adult males and females before and after the death of the alpha male in a free-ranging troop of Japanese micaques" Primates. (in press).
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[Publications] Nakamichi,M.et al.,: "Pominance relations among adult females in a free-ranging group of Japanese monkeys at Katsuyama" American Journal of Primatology. (in press).