Research Abstract |
これまでの蝶の略画図形を用いた我々の研究によって,人工カテゴリーを用いて得られた知見(例えば,特徴の出現頻度や学習した事例の情報がカテゴリー化に影響を及ぼすこと)が蝶図形のカテゴリー化にもおおよそあてはまることをすでに,明らかにした.最終年度である本年度の研究は,蝶や蜂の自然画像のカテゴリー化の機序,とりわけ画像の特徴の貢献度の違い,特徴変化の種類の効果がどのような影響を及ぼすかを明らかにすること,ならびに顔のカテゴリー化の背景にあるしくみについて明らかにすることに重点を置いた。研究の結果,蝶や蜂の自然画像のカテゴリー化においても,図形を構成するある特徴(例えば,前翅)の影響が特に大であること,これは特徴の出現頻度を一定に保っても基本的にその影響の強さに変わりがないこと,さらに,追加や削除といった特徴変化の様式による影響の違いが見られること,とりわけ,追加変化は削除変化よりも再認確信度に対する影響が大きいこと,さらにこの影響は,追加変化によって画像の奇異性の変化を介して生じている可能性が高いことが明らかにされた.また,顔写真を用いてカテゴリー化の研究に関しては,様々なソースから顔写真を収集し,そのスライドを作成した.さらにこれについて,顔が持つ職業典型性(例えば,学校の先生らしさ,魚屋さんらしさなど),顔の印象評定(親しみやすさ,社会的望ましさ,活動性),顔の物理的特徴(顔の丸さ,目の鋭さなど)についての評定を行った.その結果,顔の持ついくつかの職業典型性は,顔の物理的特徴ではなく顔の印象によって強く規定されることが明らかにされた.ただ,顔の記憶において,顔写真のもつ職業典型性が,顔が観察される文脈の影響を受けながら記憶にどのような影響を及ぼすかという点については,時間的な制約から明らかにすることができなかった.今後の研究課題としたい.
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