1996 Fiscal Year Annual Research Report
ラットの脳損傷による補償作用に関する行動生理学的研究
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06610078
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
池田 行伸 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (50159638)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 誠 佐賀医科大学, 医学部, 教授 (80124808)
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Keywords | パターン弁別学習 / 白黒弁別学習 / 幼若時片眼摘出 / 視覚野破壊 / 脳の可塑性 / アルビノラット / 視覚解像度 / 神経系の補償作用 |
Research Abstract |
十分成熟した3ケ月齢の片眼が摘出されたアルビノラットに白黒弁別学習課題を与え、獲得後、残存眼と反対側の皮質視覚野を破壊して、再び同じ課題で訓練すると、出生直後に片眼を摘出されたラット(OEB)は、3ケ月齢で片眼を摘出されたラット(OET)より速く再学習することができた。これは出生直後の片眼摘出によって残存眼と同側の視覚神経路系(UXVP)が補償的に再編成したためであると考えられた。この機能高進には解像度の向上が考えられたので、昨年度、縦縞、横縞の弁別を行ってその点を調べた。その研究には視覚能力が高い有色系ラットを被験体として用いた。30mmの縞の弁別の再成立にはOEB、OETの差はなかった。しかし、反対側皮質視覚野破壊後にはじめて課題を与えると、OEB、OETとも弁別学習が成立しなかった。いったん学習した後、UXVPを用いて再学習するとかなり狭い幅の縞模様を弁別できたが、OEB、OETの弁別可能な縞幅の差は、初めに考えられたほどの大きなものではなかった。このようなことから、OEBの視覚能力の高進は、最初に仮定された解像度の向上によるのではなく、別の機能によることが考えられた。 3週齢で残存眼と反対側の皮質視覚野を破壊して、13週齢にアルビノラットの白黒弁別獲得訓練を行うと、OEB、OETとも弁別することができた。これまでの研究から、出生後片眼摘出の効果が生じるのは10週齢ほどと考えられている。これらのことから、3週齢片側視覚野破壊のOETのよい成績は残存皮質視覚野の再編成によるところが大きいと推測される。先の解像度の結果と照合すると、幼若時に視覚系に損傷を受け補償効果が現れるのは、手がかりに対する認知能力が高まったからだと考えられる。その認知能力は環境から刺激を受けて、幼若時の皮質が再編成することによって作られるであろうと推測された。
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