1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610127
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
財部 盛久 琉球大学, 教育学部, 助教授 (50175436)
|
Keywords | 自閉症乳幼児 / 母子相互反応 / 前方視的検討 |
Research Abstract |
何らかの自閉症状を示す幼児(1歳6ヵ月〜2歳2ヵ月)5名と精神遅滞の症状を示す幼児(1歳6ヵ月から1歳8ヵ月)5名,発達状の問題を示さない幼児(1歳6ヵ月から1歳8ヵ月)5名を各々疑自閉症群,疑精神遅滞群,健常群とし,自由遊び場面における母子相互反応を観察した.健常群を除き,初回観察(1歳6ヵ月から1歳8ヵ月)から1〜2ヵ月おきに2から3回の観察を行った.プレイルーム内で30分間の自由遊び場面をVTRに収録し,撮影開始15分後より10分間の母子相互反応を分析の対象とした.VTRに収録された母子の音声行動,および非音声行動の全てをトランスクリプトし分析を行った. 母子間のやりとり行動をトランクスリプト資料とVTRを照合する質的な分析の結果,健常群では子どもが自分の意思を明確に母親に示しており,意図が読み取りやすく,自分の意図が伝わるまで何ども繰り返された.疑精神遅滞群は子どもが自分の意図を母親に伝えようとしているのは分かるのだが,それが何を意図しているのか分かりにくい.ところが,2回め以降の資料を分析すると次第に意図が分かりやすくなってくる.一方,疑自閉症群では母子間のやりとり行動はあるのだが,母親に対して自分の意思を伝えようとしているようには感じられない.母親が物を差し出し,それに対して子どもが反応しているように見えても,ただ受け取ったり,触ったりするだけで母親への意図を感じ取ることはできない.あるいは,部屋の中を無目的に歩き回り,部屋の中の物に触れてはいるがそれで何かしようとするわけでもない.このように自閉症群の母子相互反応では子どもの母親への意図を含んだやり取り行動はほとんど見られなかった.1歳後半から2歳前半にかけての自閉症群ではやり取り行動はあっても,それを用いて他者とコミュニケーションをとる段階には至っていないと推測される.
|