1994 Fiscal Year Annual Research Report
芸術生産の社会経済的基礎に関する民族誌的研究-小劇場シーンの分析を中心として-
Project/Area Number |
06610157
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
佐藤 郁哉 茨城大学, 人文学部, 助教授 (00187171)
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Keywords | 小劇場演劇 / 社会的世界 / 芸術界 / 商業化 / サブカルチャー / 資本 / 文化生産 / 社会的分業 |
Research Abstract |
従来行なってきた参与観察を中心技法とする、小劇団Uを対象としたインテンシブなフィールドワークを継続し、かつ対象を複数の劇団および関連団体に広げ、また海外調査(民間財団の助成による)をも並行して行なうことによって、複合的な比較研究を念頭においたイクステンシブな調査を実施してきた。その成果として、以下のような事が明らかになった。 1.「社会的世界」としての演劇界 いわゆる演劇界ないし小劇場界は、Becker,Hらの言う社会的世界ないし芸術界の1つとしてとらえるのが妥当であることが明らかになった。重複するメンバーシップを持ち、境界が必ずしも明瞭ではない「劇団」はこれらの概念においてとらえる時に社会組織上の特質が明確にとらえられる。 2.商業化論の問題性 調査の結果は、1980年代の小劇場ブームについて言われてきた小劇場演劇の商業化論が非常に単純な前提にもとづく暴論であることを明らかにしている。このような問題については、「芸術 対 商業」という単純な2項対立図式ではなく組織構成と市場構造との関係に留意した視点が必要となる。 3.「芸術爆発」とプロフェッション化 1980年代から1990年代にかけての芸術に対する社会経済的支援の動向は、米国における1960年代以降のいわゆる「芸術爆発」に匹敵する特徴を持っている。果たしてこれが米国と同様、芸術家のプロフェッシン化に促進的な影響を与えるかどうかは予断の許さない。 4.文化生産と合理性 本研究で援用した文化生産論はともすれば、いわゆる「現場」という言葉に象徴される、芸術創造の非合理的な側面を的確にとらえられないうらみがある。これは、今後の研究の展開において特に留意すべきポイントである。
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Research Products
(1 results)