1995 Fiscal Year Annual Research Report
診療場面において医師の直面する「問題」とその対処方法
Project/Area Number |
06610166
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
宝月 誠 京都大学, 文学部, 教授 (50079018)
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Keywords | 慢性病 / 病気軌道 / 診療上の「問題」 / 交渉 / 制度的回避 |
Research Abstract |
本研究は慢性病の治療を行なっている診療場面において生じる主要な「問題」群がいかなるものであるのかを特定化し、医師および患者らが協同して行なうそれらへの対処戦略を具体的に明らかにすることにある。データは前年度と同じくある大学付属病院でのリウマチ外来診療室から得たものであるが、比較のために中規模の民間病院でなされた外来診療室での観察も参考資料としている。主な知見は以下の点である。 1.慢性病の治療においては、当然なことながら病院や治療を長期的な過程の中で、すなわちストラウスのいう「病気軌道」ないし「病気軌跡」の概念によって把握することが有効である。個々の診療の意味は、長い「病気軌道」の中に位置付けられてはじめて意味を持つ。 2.この「病気軌道」のゆえに、慢性病の治療には特有な「問題」が生じてくる。それは第一に、投薬などによる長期的な治療が患者にもたらす影響、第二は病気自体が進行していくことが多いため病状の変化を常にモニターする必要性、第三に患者は治療が長期におよぶために通院時間の確保と日常生活との調整に悩むことである。 3.長期的な診療継続はこれらの「問題」に医師・患者が協同してうまく対処するときに可能となる。診療場面で用いられている医師-患者間の相互作用の観察から「専門的概念に頼らない対話」「交渉」「制度的回避」が対処戦略として重要な位置を占めていることが明らかになった。
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