1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610172
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Research Institution | KUMAMOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
丸山 定巳 熊本大学, 文学部, 教授 (00039968)
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Keywords | 公害 / 水俣病 / 地域社会 / 企業都市 |
Research Abstract |
企業都市に発生する公害をはじめとする地域問題は、その特有の社会構造とりわけ権力構造から生み出されてきている。したがって、その権力構造の様態と背景を探ることが作業の前提となる。その際、当該企業の以下のごとき指標がとりわけ重要となる。すなはち、(1)自治体機構との関係(人的、財政的)(2)地域資源の占有状況(土地、用水)(3)地域労働力市場における占有状況、などの面でそれらのウエイトが大きくなるにつれて、住民の企業への依存度が増大して、いわゆる企業運命共同体意識が醸成される。こうして企業による強力な地域支配構造が確立されると、地域社会では企業活動へのチェック機能が衰退し、企業による環境の私物化・破壊を抑制できなくなる。チッソ(株)と水俣並びに三井系企業と大牟田市の関係は、その典型だったといえる。本研究は、これら2つの企業都市の比較を通してこの点を実証的に解明することを目的としてきたが、今回は、資料や調査の制約から主として水俣市についてその実態を取りまとめることにする。 水俣市では、上記の指標のいづれにおいても独占状態が進行し、それに応じてチッソ運命共同体意識が住民の中に深く醸成されていった。その過程で環境破壊が激化したが、地元では放置・黙認され続け、ついには水俣病を発生させてしまった。しかも、被害者運動は、チッソ運命共同体の存続に危機をもたらすものとして、住民からは抑圧・敵対的に対応されたために、結果として、被害がさらに拡大し救済も遅れてしまった。現在、水俣では、水俣病問題の解決の一環として被害者と一般住民の関係を修復するための「もやい直し」活動が展開され始めたが、基本的な構造が変わっていない故に困難も予想される。
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