1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610176
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
佐久間 政広 東北学院大学, 教養学部, 助教授 (30187075)
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Keywords | 農民家族 / 家族 / 農村社会 / 家 / 農業生産組織 / 世代交代 |
Research Abstract |
今年度は、20年以上にわたり農業生産組織が存続している宮城県角田市古豊室地区および愛知県安城市高棚地区を対象地とし、生産組織参加農家を分析の焦点として研究をおこなった。とりわけ今年度は古豊室地区の事例の分析に力を注いだ。高棚地区の生産組織が稲作の大規模受託組織であるのに対し、古豊室地区の組織は規模拡大を志向せず、共同化により稲作の合理化を進め、複合部門等の拡充によって地域内での自家労働力の燃焼を目指した。この組織は、地区内13戸の農家のうち8戸(1戸は地区外)をメンバーとし、参加農家の稲作機械作業の共同および主婦たちを働き手とする「梅干加工」の二つを柱とする。組織結成より23年経過したが、稲作作業が合理化されたこともあり、後継者夫婦が自家の稲作にたずさわる必要はなく、現時点では少数の若手オペレータと高齢の働き手だけで稲作が営まれている。後継者夫婦は、恒常的な農外就労ないし畜産等の複合部門に専念している。「梅干加工」は農家の主婦にとって好都合な就労場として開始され、参加農家の主婦は例外なく一度は就労した。だが、9名の就労者(姑層)は「孫の世話」を理由に次々と離脱し、現在3名に減少した。後継者妻が「梅干加工」で継続的に働いたケースはない。後継者妻は、結婚以前に就労していた農外の職を結婚・出産後も継続し、育児は姑たちが「梅干」を辞めて担当している。こうした事例から、以下の点が明らかにされた。1.農家の後継者イコール農業後継者ではなく、後継者は自家農業を選択可能な仕事の一つとして捉えており、親世代は自家農業の維持をもはや強要できないこと。それゆえ、2.農業を「家業」として位置づけられないこと。3.農民家族を考えるさい、イエを分析単位とするのではなく、各世代の夫婦単位でみていく必要があること。3.「梅干加工」に対する姑層と嫁層の態度の違いから明らかなように、「やりがい」が就労行動を決定するポイントとなっていること。
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