1994 Fiscal Year Annual Research Report
ソフトウェア企業の地方展開が地方都市ホワイトカラー労働市場に及ぼす影響
Project/Area Number |
06610178
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
岩本 純 文教大学, 国際学部, 助教授 (00184903)
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Keywords | ソフトウェア産業 / 労働市場 / 多重構造 |
Research Abstract |
本年度の研究課題は、平成不況以前と以後におけるわが国のソフトウェア産業の諸側面についての変化を把握することにあった。長期化する不況は、産業界全体の情報化投資の抑制による受注の減少をもたらしたが、それに留まらず、ソフトウェア産業を含む情報産業の構造的変動を急激に押し進めることとなった。「ネオダマ」と呼ばれるネットワーク化、オープン化、ダウンサイジング化、マルチメディア化の進展である。そもそも、これらの変化は、情報技術の急速な進化を基底にしているが、不況による既存資源の有効利用とフレッキシビリティー化の追求が、これらの進化を加速化しているといえよう。 すでにアメリカでは、パソコン化、ソフトのパッケージ化が浸透していたにも拘らず、わが国の関係者は、依然として旧態の汎用コンピューターの一品受注生産が主流であり、ダウンサイジング化を、経営戦略の視野に入れていなかった。それが一変したのである。いわば第二次産業におけるフォーディズムから、ポスト・フォーディズムへの転換と同じ過程を、余儀なくされたのである。重層型多重企業間関係を許した人月を生産性計測基準とする労働集約型生産の継続・維持は困難となった。 以上の推移が雇用及び従業者に及ぼした影響は、やはりかつてから懸念されていた問題点の深刻化として現出した。全般的な労働市場の悪化を背景に、専門的技術者(アナリスト、プロジェクト管理者等)のあいも変わらない不足と、代替可能な労働力(プログラマ-)の一層の過剰を促進した。この変化は、すでに存在した地域間格差(首都圏と地方)を直撃したといえよう。経営戦略(統合化か専門化)、資本系列等の要因とあいまって、企業の生死、及び雇用のリストラの行方が決まってくるといえよう。この点を、次年度に綿密な調査を踏まえて、明らかにしていきたい。
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