1996 Fiscal Year Annual Research Report
国際化時代における地域社会への情報化の進展と住民生活-十勝地方の場合
Project/Area Number |
06610187
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
吉原 功 明治学院大学, 社会学部, 教授 (60062171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 葉子 慶応義塾大学, 理工学部, 専任講師 (70286649)
加藤 秀一 明治学院大学, 社会学部, 助教授 (00247149)
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Keywords | 情報化 / 国際化 / ジェンダー / コミュニケーション / エコロジー / 都市と農村との架橋 |
Research Abstract |
十勝地方の情報化は、郵政省、農林省、北海道庁の情報化政策にいち早く呼応して進められたが、それを主導したのは十勝農協連である。その主眼は農業の近代化、合理化、集中化、管理化をすすめることによって国際化という厳しい状況に対応しようとするものである。それは個別農家へのコンピュータ導入を伴っており、農民の生活と生産活動にいかなる変容をもたらすかという社会学的な問題を提起する。生産活動では畜産関連での成果にみるものがある一方畑作では単位農協の取り組みに濃淡がありまだ試行錯誤の段階である。他方、情報化は地域の人間関係、農家世帯における女性の位置や役割に微妙な変化をもたらし地域社会の変容を推進していることが指摘できる。さらに興味深いのは情報化が経営規模の拡大志向をみせているのに対し、オールターナティブを提起する運動の輩出がみられることである。それは農業生産における環境問題の提起および都市消費者とのコミュニケーションの可能性の追求となってあらわれている。これらもなた異なった視点からの国際化時代への積極的取り組みといえるであろう。重要なのはこうした現象の背後に、十勝地方の住民にフロンティア精神ともいうべき社会的性格構造が形成されていることである。それは日本とか北海道という枠組みで物事を考え行動するというよりは自らの生産と生活の場についてのlからの問題発見が普遍的な意味をもつことになっている、ということでもある。市民運動としての「十勝百科事典」作成運動に千名も参加し6年かけて完成させていることや、産業廃棄物処理施設建設問題を契機に村の構成員をほぼ網羅する形で学習運動が農民自身の手で組織され展開されていることを最近の典型例と指摘できよう。情報化の推進にしろその対抗運動にしろこうした文脈のなかにおいて捉える必要がある。
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