Research Abstract |
本年度は,公的機関のヒアリングを中心とした予備調査を実施した。大阪府には約50万戸の木造賃貸住宅があるが,その大半は大阪市の外縁部,いわゆるインナーリングエリアに集中している。昭和48年頃から豊中市を始めとしたこれらインナーリングエリアで,住宅・環境整備型再開発が始められたが,道路条件の悪さ,経営者の老齢化,経営基盤の弱さなどにより小規模かつ分散的な建て替えにとどまった。昭和57年,国の制度化「木造賃貸住宅地区総合整備事業制度」をきっかけに,比較的大規模な住宅・環境整備型プランが策定され,再開発の機運が高まった。その後「市街地住宅密集地区再生事業」(平成元年)「密集住宅市街地整備促進事業制度」(平成6年)に改編され今日に至っている。現在,大阪府下においては,堺市,豊中市,寝屋川市,門真市の4市がこの事業地区に指定され,再開発事業が行われている。 本研究では,大阪府建築部住宅政策課,第3セクターの財団法人大阪府まちづくり推進機構を訪問し,制度的側面の基礎資料を蒐集することにより制度の成立過程を分析するとともに問題点解明の手がかりを模索した。また,事業規模が最も大きい寝屋川市東大利地区を調査対象地と定め,寝屋川市都市整備部まちづくり推進室住環境整備課において当該地区の当局側の地区指定の経緯,再開発事業組織の構成,当該地域にかかわる人的・経済的・建築的資料の蒐集を行った。 現在のところ本調査へ向けての準備段階ではあるが,以下のことが明らかになってきている。(1)老朽住宅密集市街地の再開発は,民間主導型であり,公的機関は援助の域を出ない。(2)地主・家主中心的再生事業であり,居住者に対する配慮は副次的である。(3)一方居住者は,単身者・学生等の流動的居住者が多く,権利を主張するものが少ない。同時に同種の住宅が近隣に多数あり,転居に抵抗感がない。(4)反面,戦前に建築された長屋や,住民にコミュニティの形成が見られるところでは再開発が困難になっている。高度成長期に建築された木造アパート・文化住宅等,実施が容易なところでしか行われていない。
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