1995 Fiscal Year Annual Research Report
都市再開発における計画と現実-老朽密集住宅地における再開発の主体要件-
Project/Area Number |
06610198
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
神谷 国弘 関西大学, 社会学部, 教授 (20067515)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀧本 佳史 神戸大学, 工学部, 講師
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Keywords | 老朽密集住宅地再開発 / 社会計画 / 都市建設促進法 / 密集住宅市街地整備 / 市民参加 / 地区詳細計画(B-プラン) / 促進事業制度 / Gentrification |
Research Abstract |
本年度は,前年度に引き続き公的機関に対するヒアリング調査を継続的に実施するとともに,7月下旬から8月上旬にかけて,大阪府寝屋川市東大利地区の再開発関係者(地主・家主)に対するヒアリング調査,再開発後のマンション居住者に対するアンケート調査を実施した。 調査結果は分析段階にあるが,現在のところ以下のことが明らかになってきている。老朽密集住宅地区は,その形成過程と建物の形態,居住者の属性に基づき,「インナーシティ型(戦前長屋型)と「スプロール型(戦後木賃型)」に類型化できる。さらに,「スプロール型」を「分散型(東京型)」と「集中型(大阪型)」に類型化できる。本研究では,わが国において特徴的な「スプロール型」,中でも大阪に特化する「集中型」に焦点を絞る。現在分析を進めている寝屋川市東大利地区は,その「スプロール型-集中型」の典型的事例である。「スプロール型-集中型」老朽密集住宅地区は,その集中性ゆえに再生事業は比較的成立しやすい。しかし一方で,再生事業にともなう住民の入れ替え,立ち退き問題が発生していることも事実である。 最近,都市再開発に関する理論的実践的蓄積の豊富なドイツにおいて,老朽密集住宅地区再開発をめぐるGentrification問題がクローズアップされてきた。Hauβermann, Hによると,Gentrificationとは「ある特定地域における低収入の住民が,高収入もしくは異なった消費スタイルを持った住民に取って変わられること」である。そもそも都市住宅地区再開発の理念とは,そこに居住する様々な階層の人々の住宅・住環境を整備することが目的であり,決して低い階層の人々や弱者を追い出したり,立ち退きを強要するようなものではない。しかし,わが国の都市再生はドラスティックに進行し,理念と現実との大きな乖離が存在することを認めざるを得ない。研究報告作成に向けて,Gentrificationを最小限におさえて,住民の回帰できるような措置を事業の中核においているドイツとの比較研究が進行中である。
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