1996 Fiscal Year Annual Research Report
米国進歩主義教育期における「実践的知性観」の普及とその批判に関する研究
Project/Area Number |
06610229
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Research Institution | NAGOYA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
早川 操 名古屋大学, 教育学部, 助教授 (50183562)
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Keywords | 探究教育 / 専心的活動 / 独創性 / 探究的態度 / 自尊心 / 探究知 / 行為的直観 / 協働探究者 |
Research Abstract |
最終年度は、進歩主義教育期において展開された実践的知性の具体的な例としての「探究教育」の普及を取りあげて考察した。具体的な研究成果としては、以下のことが得られた。 1.ジョン・デューイらが提唱した個性育成のための教育は、「感受性・興味・専心的活動・独創的思考」に基づいた「探究的態度」の必要性を主張したが、その考えの正当性は八年研究などによって証明され、その後普及することになった。 2.個性に応じた教育は、理論的には「探究的態度や独創的個性」を育てる側面を重視すると同時に、学習能力の低い生徒には「低い自尊心や依存心」を植えつけてしまうという危険性が指摘されている。 3.現代の学校教育では形式的な「学校知」の学習に追われ、自分の関心に根ざした個性的生き方を追求する「探究知」の学習は弱い。探究知は基本的には自己と他者のかかわりのなかで生じるため、状況や他者の精神を解読する「実践知・臨床知」としての「行為的直観」の学習を促進すべきであろう。 4.探究教育の状況を、自己のアイデンティティを発見しようとする若者と、個性を育てケアする力を伸ばそうとする成人とが出会う場であると考えるならば、両者は相互に関与しあうことによって、ともに「パーソナルな意味体系」を構築・再構築する「協働探究者」である。開かれた探究教育は、パーソナルな探究知に基づいた協働探究者の育成をめざす。
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[Publications] 早川操: "「ラディカル教育学者による進歩主義教育批判の再検討-デューイの『学問の自由』をめぐるリヴィジョニストらの批判を中心に-」" 日本デューイ学会紀要. 第37巻. 63-69 (1996)
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[Publications] 早川操: "「パラダイム・シフトのなかのデューイ-日本とアメリカにおけるデューイ教育思想研究の比較-」" 近代教育フォーラム. No.5. 107-115 (1996)
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[Publications] 早川操: "「『きずな・ケア・自尊心』を育む人間関係空間の意義再考」" 日本デューイ学会紀要. 第38巻. 141-147 (1997)