1996 Fiscal Year Annual Research Report
旧制高校とパブリック・スクールにみるエリート教育の構造と機能の比較研究
Project/Area Number |
06610231
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
竹内 洋 京都大学, 教育学部, 教授 (70067677)
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Keywords | 旧制高校 / パブリック・スクール / ジェントルマン / 教養主義 |
Research Abstract |
パブリック・スクールの教育目標は宗教や道徳などによる人格鍛練てあり、そのためにスポーツが重視された。こうした全人教育はジェントルマンの形成を目標にしたものだった。だから、監督生や下級生使役といわれる上意下達の制度のなかで培われるものとも考えられた。ということから、こうしたジェントルマン教育=全人教育はしばしば、知育をおろそかにし,「反知性主義」ともなりかねなかった。一方、旧制高等学校においては、「社会上流ノヒトニシテ官人ナレバ高等官。商業者ナレバ理事者、学者ナレバ学術専攻者ノ如キ社会多数ノ思想ヲ左右スルニ足ルベキモノヲ養成スル所ナリ」(森有礼)としてエリート学校とされたが、特定の身分集団との結びつきから解き放たれ徹底したメトリクラティックな選抜によって入学試験がおこなわれた。このことからドイツの教養市民層とおなじく、旧制高校生は身分感情や身分文化をもたなければならなかった。これが教養主義である。パブリック・スクールの教育がジェントルマンという社会の中に定着した理想的人間像を参照てきたときに、旧制高校はその対応物に乏しく、自ら人間像を生み出さなければならなかったところに両者の教育機能の差がでてきた。なお、パブリック・スクールと旧制高校の入学者の階層についても実証的に分析をした。その結果は、パブリック・スクールやオックスブリッジ入学者が一部の上流階級に独占されていたわけではなく、中産階級さらには下層中産段階にもかなり開かれていたこと、また旧制高校(第一高等学校)のほうは、貧困家庭も10%程度いるが、上級ホワイトカラー、専門職などの子弟がかなり多く、当時としては相当高い階層の子弟であることが明らかにされた。
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Research Products
(1 results)