1995 Fiscal Year Annual Research Report
「消費社会における教師」に関する実証的研究-意思決定過程に注目して
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06610250
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Research Institution | FUKUOKA UNVERSITY OF EDUCATION |
Principal Investigator |
油布 佐和子 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (80183987)
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Keywords | 教師役割 / 多忙化 / エスノグラフィ |
Research Abstract |
本年度の研究目的は、平成6年度に実施したエスノグラフィー調査を継承し、消費社会における教師の役割について検討することにあった。 本年度は、二つのテーマを設定した。一つは、近年問題になっている教師の「多忙化」に焦点をあて、多忙化を引き起こしている現実を検討する事から、現代教師の役割を考察しようというものである。これは、6年度の研究を継承し、いわばミクロな教師の教育行為レベルから教師役割を考察しようと意図したものである。二つ目は、学校内における意思決定過程を観察することにより、現代の学校がどのような責務を負わされ、教師がそれにどのように対応していっているのかを明らかにすることであった。これは、学校組織レベルから教師役割にアプローチしようとしたものである。 以上のような研究目的を達成するために、エスノグラフィーと学校の配布資料・アンケート調査等の方法を並行して実施した。 その結果、第一の課題について明らかになったことは、(1)多忙化は、企画、事務、指導、管理というような種類の違った仕事を、並行しながらこなさねばならないという、教師の複線的な仕事の在りように、内在していること、(2)突発的出来事によって仕事の優先順位を瞬時に決定しなければならないのだが、(3)突発的出来事が頻発する状況にあることが示され、これが現在教師の多忙化を招いている原因であることが明らかになった。すなわち、「児童・生徒」役割に収まりきれない子どもの増加が、教師の多忙化を招いているのである。この点については、その概要を紀要にまとめた。 第二の課題については、現在アンケート調査を集計中である。これまでのところでは、意思決定のあり方など、学校の組織化がすすめられてきており、個別教師の責任と指導の範囲が明確になりつつあること、これに伴い、これまでのゲマインシャフト的人間関係が大きく変容しつつあることの実態が浮かび上がっている。学校の機能が過渡期を迎えていることが示唆されるが、この点に関して、さらにそれと教師役割との関連については今後さらに検討されねばならない。
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