1995 Fiscal Year Annual Research Report
創造される沖縄の若者文化 -本土化とパブリックカルチャーとしての地域社会-
Project/Area Number |
06610288
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
太田 好信 九州大学, 大学院・比較社会文化研究科, 助教授 (60203808)
|
Keywords | 沖縄若者文化 / マスメディア / メディアの消費理論 / カルチュアル・スタディーズ / ポピュラー・カルチャー / パブリック・カルチャー / 地方差 / 沖縄文化 |
Research Abstract |
本年度は、マスメディアをとおして生産される〈沖縄らしさ〉についての言説とそれが消費される過程に注目してきた。まず、生産された言説について。例えば、雑誌『ワンダー』の編集長新城博和や笑築過激団団長の玉城満らとのインタビューでは、〈沖縄らしさ〉を統合された(体系的な)ものとして追求せず、個々の感性にまかせて「部分的な沖縄」の提示を行っていることが判明した。つまり、〈断片化された沖縄の経験〉を小規模出版や演劇において再構成しようという姿勢が共通していた。このインタビューにおいて、沖縄におけるローカルな演劇集団(笑築過激団)と地方行政(沖縄市)との関連が新たなる研究課題として浮上してきた。この両者は、積極的にコザ(沖縄市の旧称)を復活させ、基地体験をポジティヴに捉え直し、〈チャンプル主義〉を市の観光資源にしようとしていた。このような一部芸能関係者と行政との結びつきは、これまであまり問題として取り上げられたこなかった。 さて、消費の過程について派、八重山地方での高校生にたいするインタビューの結果から、笑築過激団などは沖縄本島、特に中部地域のようには、支持を受けていないようだ。むしろ、本土の番組を受容していることが判明した。このことから、沖縄のローカル番組の受容形態はかなり地域差があることが判明した。この事実から、当初予想していた「コザ文化」の離島地域への影響は大きい、という仮説を修正しなければならないことになった。沖縄県におけるメディアの浸透力も一様ではなく、本島地方と先島などの離島では、そうとうの地域差があり、それによって沖縄本島から発信されるパブリックカルチャーが必ずしも、先島において同じような影響力を持つかは、現状では疑問視されるべきだ。
|