1995 Fiscal Year Annual Research Report
戦前司法省の構造と実態-治安維持法の成立と運用を中心に-
Project/Area Number |
06610298
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
荻野 富士夫 小樽商科大学, 商学部, 教授 (30152408)
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Keywords | 治安維持法 / 過激社会運動取締法案 / 思想犯保護観察法 / 司法省 / 思想検事 / 「転向」 / 「人権指令」 / 破壊活動防止法 |
Research Abstract |
1.三年計画の第二年度となった本年度の研究の重点は、「治安維持法成立・「改正」史」という『治安維持法関係資料集』のための「解説」の構想と執筆となった。『資料集』の編構成にしたがった内容構成となったが、その特色は、(1)治安維持法の前史を含む制定・「改正」法の起草過程を明らかにした。(2)当局の公的「解釈」、「解説」類を中心に、立法および「改正」意図、拡張解釈を跡づけた。(3)運用の実態を、特高警察による捜査・検挙・取調べ、司法当局による検察・裁判・行刑という思想犯「処理」の一連の過程を検討した。(4)「転向」政策の法制化といえる思想犯保護観察制の実態を検討した。(5)植民地の朝鮮、「満州国」などにおける治安維持法の運用状況を掘りおこし、「(大」東亜治安体制圏」という考え方を提示した。(6)「廃止」と、戦後の治安法令への継承を明らかにするように努めた。などの特色をもつ。そのうち、(1)、(4)、(5)については、これまでの治安維持法研究に新たな論点を加ええたように思う。 2.この執筆と並行し、「(大)東亜治安体制圏」の実態をさらに明らかにするため、東洋文庫や外交史料館などから資料を蒐集することに努めた。そこでは、治安維持法の問題に限らず、警察・軍などの取締機関にも範囲を確大した。 3.最終年度としては、上記の資料蒐集を継続するほか、司法権力のなかの「思想検事」について検討を加え、小論としてまとめる予定である。
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