1994 Fiscal Year Annual Research Report
戦国期紀伊・和泉・摂津における民家の地域認識の基礎的研究
Project/Area Number |
06610302
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
矢田 俊文 新潟大学, 人文学部, 助教授 (40200521)
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Keywords | 日本中世 / 戦国期 / 紀伊・和泉・摂津 / 村 / 地域 / 知識認識 |
Research Abstract |
本年度は以下のような研究を進めた。 戦国期における民衆の地域認識を示す史料として売券の収集とその分析を行った。また、民衆の地域認識を生み出す根拠の一つであるムラとムラの基礎的結びつきを確認するために、惣墓に関する史料蒐集と現地調査をおこなった。さらに、統一権力の地域認識を示す史料として、国絵図・検地帳に関する文献・史料を蒐集した。 以上の研究によって新たに得られた知見は、おもに売券の分析によってえられた。以下はその概要である。 戦国期の和泉国の売券と荘園領主は発給した文書に見られる地域呼称を整理することにより、戦国期にいたっても荘園領主は中性前期からの荘園制支配の枠組みの呼称を使用するのに対し、村人はそのような荘園制支配の地域呼称ではなく、村人独自の地域呼称を使用し始めたことを明らかにすることができた。それによって、戦国期の民衆は、生活する地域基礎単位をムラと呼び、ムラとムラの集合をショウ(庄)・リョウ(領)という地域呼称を使用するようになったことがわかった。 このことにより、戦国期においては領主の地域呼称とは異なる地域呼称を民衆が使用し始めたことを明らかにすることができた。さらに、戦国期の民衆は、生活する地域基礎単位をムラと呼び、ムラとムラの集合をショウ・リョウという地域呼称を使用するようになったこともわかった。 以上のことにより、研究目的の一つとして掲げていた民衆の史料論を通じて地域認識を探るという目的は達成されたと考える。
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Research Products
(1 results)