1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610311
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
頼 祺一 広島大学, 文学部, 教授 (50033494)
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Keywords | 朝鮮通信使 / 交隣 / 日朝関係 / 文化交流 / 近世儒教 |
Research Abstract |
本研究は,近世期に12回来日した朝鮮通信使と,日本の学者・文人との学術・文化交流の諸相とその特質,さらには近世の学術に及ぼした影響を考察するための基礎作業として,刊本あるいは写本のかたちで残されている筆談・唱酬等の史料を調査・収集し,時代・地域・階層別に整理してデータベース化することを目的としている。本年度は,前年度収集した史料の整理を中心作業としたが,引き続いて対馬の宗家文庫の関係史料の調査・収集を行った。通信使側の史料としては現在刊行中の『大系朝鮮通信使』が多くの基本的史料を収録しているが、いまだ2巻分(慶長〜寛永度)が未刊であるので,『海行惣載』収録の紀行と合わせて交流の実態を確認している。宗家文庫は厖大な量なので赤間関から大坂までの瀬戸内の関係史料,とくに各種の「船中毎日記」や「道中毎日記」を撮影したが,いまだ全部の撮影を終えていない。収集した史料を一部検討した範囲でいえることは,文化交流の実態を具体的に物語る史料は少ないということである。これと山口県文書館毛利家文庫の通信使史料として比較してみたが,具体的な文化交流の実態は領主文書では明らかにしえないことが予想された。ただ,先例遵守の応接ではあるが,時代的変化はみられるので,幕藩関係や応接に伴う民衆負担との関係の考察は深めることが可能である。宝歴度の「長門発甲問槎」に見られる長州藩儒瀧鶴台についても山口県文書館で関係史料を収集したが,徂徠学派の思想や文芸活動のかかわりで交流の歴史的意義を考察していく必要がある。とくに近世期における日朝の政治体制の違いや学者の社会的地位の差異を踏まえて,文化交流の諸相を考察する必要があるが,善隣友交は製述官・書記と日本の学者との間には巾広く見られることは明らかである。次年度はこれらを含まて一応のまとめをしたい。
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Research Products
(1 results)