1995 Fiscal Year Annual Research Report
明治期小学校と教員の村落社会における機能および地位の研究
Project/Area Number |
06610321
|
Research Institution | Tokyo Kaisei Gakuin University |
Principal Investigator |
木槻 哲夫 東京家政学院大学, 人文学部, 教授 (80260941)
|
Keywords | 明治期日本の教育 / 公立小学校 / (愛知県北設楽郡)稲武町 / 村落共同体 / 青年会(青年田) / 小学校長 / 臣民教育 |
Research Abstract |
調査・研究 愛知県北設楽郡稲武町(大字 小田木を中心)の調査を行った。明治後期、公立小学校教員が村人たちの生活の中で果たした役割や、その位置について考察した。 研究の内容 調査対象地域が山深い村であったこと、明治後期公立小学校教育が、国家的施策として、ようやく定着しつつあった時期であることが前提となるが、村内中農出身の教員青木福治郎は小学校高等科・同県内師範学校卒業後、出身郡内の教員を歴任し、やがて故郷の村の小学校長に就任し、活躍する。村内の日常行事において、小学校長は村長・村会議員と並ぶ有力者であった。その一面は公立小学校長(教師)・公吏としての顔であり、他の一面は村の青年会の指導者で、村出身の有誠者であり、村の青年等の先輩としての顔を持っていた。 学制によって新たに発足した公立小学校は、その草創期に、その設立、維持が地域社会の共同事業として独特の意義を有した。法制上の不備を補って、旧来の共同体の機能に依存して、はじめて小学校の経営が可能であった事情もある。公立小学校は、子どもの教育を通じ村内殆ど全戸に関わり、村人の精神的紐帯の核ともなっていた。具体的には、青年会の指導者として小学校長は、他の教員と共に、本来、村共同体のためのものであった青年会の組織や働きが変質して、明治国家体制に適合し、組み込まていく過程をリ-ドすることとなった。 成果の報告 上記の問題を考察する重点史料として、小田木村の青年会の会誌の蒐集につとめ、その復刻をめざした。本助成研究の第一次報告書として、青年会誌『成徳』復刻第1集を添附提出する。以後、第2集以下を機会を得て続刊する予定である。
|