1995 Fiscal Year Annual Research Report
近代東アジア民衆運動における「連続」と「転換」-中国・朝鮮の比較研究
Project/Area Number |
06610335
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
趙 景達 千葉大学, 文学部, 助教授 (70188499)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 賢 千葉大学, 文学部, 助教授 (90230482)
|
Keywords | 民衆運動 / 徳望家的秩序観 / 原州民乱 / 紅灯教反乱 / 儒教的ユートピア / ナショナリズム |
Research Abstract |
当該年度における主要な研究目的は、所謂ウェスタン、インパクト以降における朝鮮中国それぞれの民衆運動を規定していた「正統」性論理の比較検討であった。換言すれば近代東アジア世界-本研究の場合は朝鮮・中国に限られる-において影響と起こった民衆運動が如何なる論理により自らの行為に正統性を付与し、如何なる異議申し立てを行い、その論理が如何なる回路を経て「ナショナリズム」へと流れ込んでいくのか、を具体的に検証することが作業の核心となったわけである。2の点について趙は李朝末期の原州民乱に着目し、民乱が一君万民的な儒教的ユートピアの論理に裏打ちされていたこと、それゆえに民乱は旧来の徳望家的秩序観を解体しえず、再びその論理の中に収劍していったことを示した。一方、山田は清末四川の秘密結社(会党)並びに紅灯教反乱をとりあげ、彼らの運動の指針となった「正義」が清朝王朝国家とは完全に分離された絶対的価値として掲げられていたことを示唆した。即ち中国の民衆運動は、王朝国家=儒教的ユートピアから派生した価値観を根底に据えながらも、朝鮮とは異なり王朝国家それ自体は儒教的ユートピアの体現者として認知されていなかったのである。
|
-
[Publications] 趙 景達: "李朝末期の民乱-原州民乱(1885年)の事例から-" 朝鮮史研究会論文集. 33. 93-118 (1995)
-
[Publications] 趙 景達: "大韓帝国期の民衆運動" 歴史学研究. 677. 94-101 (1995)
-
[Publications] 趙 景達: "朝鮮における実学から開化への思想的転回-朴珪寿を中心に-" 歴史学研究. 678. 12-22 (1995)
-
[Publications] 趙 景達: "金玉均から申采浩へ-朝鮮における国家主義の形成と転回" 講座 世界史(東京大学出版会). 7. 333-360 (1996)
-
[Publications] 山田 賢: "中国社会と秘密結社-その生成の論理-" しにか. 66. 15-22 (1995)