1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610342
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
片山 剛 大阪大学, 文学部, 助教授 (30145099)
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Keywords | 珠江デルタ / 集落 / 行政村 / 治水・水利 / 開発 / 村境 |
Research Abstract |
1.珠江デルタに形成・展開される民間社会を、治水・水利環境や開発形態との関連で考察するには、まず、民間社会の底辺に位置する集落について、一定程度の知見を蓄積する必要がある。珠江デルタのうち、文献史料・地図資料が比較的豊富な「西北江老三角州」を検討した結果、人家の地縁的な社会結合の最小単位を集落と定義するなら、当該地域では「社」或いは「坊」という名辞で指示されている人家の集合が集落に該当すること、国家側が把握する行政村は、ほぼ1930年代までは、これら集落の単一体、もしくは複数の自生的結合体であったこと、等々が判明し、すでに一篇の論文にまとめた(「研究発表」参照)。 2.当該地域の基本的な治水・水利施設たる堤防と民間社会の形成とについては、堤防建設の基本的社会単位は集落や行政村であること、堤防規模の拡大は集落間、或いは行政村間を結合させるひとつの契機となること、ただし集落間・行政村間の結合契機は、外敵に対する共同防衛などの場合もあり、必ずしも堤防という治水・水利面の契機に一元化できないことが推測される。 3.本研究の特徴のひとつは地図資料の活用であるが、蒐集した地図資料の中には、集落間や行政村間に“境界"が存在する可能性、また、各集落や各行政村が、その外側の農地部分に“領域"をもつ可能性を示唆するものがある。従来、旧中国の“村落"には“村境"はないというのが、戦前・戦中の華北や華中農村実地調査から導きだされた有力な帰結であった。したがって、この点の検討は、珠江デルタのみならず、旧中国農村社会の構造を考えるうえで大きな寄与となるであろう。より多くの文献史料と突き合わせて、実証を精緻化することを、来年度の課題に含めたい。
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