1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610342
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
片山 剛 大阪大学, 文学部, 助教授 (30145099)
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Keywords | 珠江デルタ / 集落(自然村) / 行政村 / 開発 / 農地 / 境界 / 領域 / 排他的耕作権 |
Research Abstract |
1.珠江デルタに形成・展開された農村民間社会について,堅固な基盤に立脚した,そしてリアリティのある農村社会像を構築するには,集落レヴェルの実態解明は不可欠である。昨年度に続いて今年度も,この側面に関する考察に力点を置いた。そして,資料が比較的豊富な「西北江老三角州」のうち,順徳県の集落(自然村)および行政村とその周辺農地との関係について,地図資料を活用して考察を進めた。その結果,少なくとも19〜20世紀の当該地域においては,行政村のみならず,集落(自然村)においても,境界と領域が存在することを実証できた。また,境界・領域の性格についても初歩的に検討し,(1)境界は可変的であり,固定的安定的なものではないこと;(2)自然村や行政村の人工などの実力に応じて変動すること;(3)領域の領有主体は,堤防などの開発主体と密接に関連すること;(4)1945〜49年の内戦期に減少した「覇耕」から,ある自然村の領域内農地は,他の自然村の者が所有権を持つことはできるが,その経営耕作は自村の村民に限定されること(つまり当該自然村が排他的耕作権を有すること);等を導きだした。 2.ところで,日本の中国史学界では,現在に至るまで,旧中国における「村落共同体」の不在がほぼ通説として受け入れられている。そして,不在論の有力な論拠は,「村の境界」および「村の領域」の欠如の指摘であった。したがって,上記実証は,旧中国の村落の性格に関する再検討を迫るものであると言えよう。 3.境界・領域の問題は,開発の諸段階に応じて変化しうる可能性が高い。時代・地域の相違に応じて,境界・領域の形成・展開の具体的過程および領域の帰属基準の変化を考察する必要があろう。後者について,耕作権〜所有権〜納税権(図甲制との関連で)を想定できる。今後は,この点についての考察を進めていきたい。
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