1994 Fiscal Year Annual Research Report
蒙古源流の諸写本とその歴史学的見地からみた比較研究
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06610343
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森川 哲雄 九州大学, 大学院・比較社会文化研究科, 教授 (50101275)
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Keywords | 蒙古源流 / サガン・セチェン / ウルガ本 / アラクスルデ本 / 殿版 |
Research Abstract |
本年度は(初年度)は以下のように作業をおこなった。すでに平成4年度の文部省派遣在外研究員として内蒙古社会科学院、内蒙古図書館、ならびにモンゴル国の国立中央図書館所蔵の、未公開の『蒙古源流』写本を調査し、その重要と思われる写本についてはテキストがほぼ復元できるかたちで手写してきている。それをもとにすでに公刊されている写本、版本をあわせ、10数種類のテキストを比較し、それらを系統別に分類した。そしてそれらの系統の諸写本において、最も古いもの、あるいは重要と思われるもの5写本をピックアップした。すなわち、通称ウルガ本、アラクスルデ本、エルデニイン・トプチヤ(内蒙古社会科学院所蔵)、チャガン・テウケ(モンゴル国立中央図書館蔵)、殿版の5種類である。そしてこれらの5種類の写本を一つづつラテン文字化し、コンピューターに全文入力する作業を行った。さらに別にこれら5種類のテキストを並べて入力する作業も実行した。これらの作業を通じて、『蒙古源流』のかなり古いと思われる写本の間に、テキストの異同がかなり存在することが明らかになった。これは書写者がおそらくは意図的に原テキストに近いものに新たな書き加えをしたり、あるいは削除したものと考えられる。その理由については今後の検討を待たねばならないが、一部には清朝という満州人支配王朝下の言論統制策の影響を受けたものも認められた。現在、その成果の一部については原稿を完成しており、まもなく投稿する予定である。
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