1996 Fiscal Year Annual Research Report
モスクワ国家の貴族層-プロソポグラフィーの手法によるその形成史に関する研究-
Project/Area Number |
06610351
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
栗生澤 猛夫 北海道大学, 文学部, 教授 (40111190)
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Keywords | モスクワ国家 / 身分制 / 封建制 / 貴族 / 退去権 / 勤務の自由 / 勤務人層 |
Research Abstract |
平成8年度は、モスクワ貴族層の実態をさぐるため、イヴァン雷帝期の1550年10月に行われた、いわゆる千人改革と、その結果編まれた『千人書』の分析に力を注いだ。これは平成6年度からはじまった本研究において重要な位置を占めるものである。本研究では、まず平成6年度に、西欧におけるのと同様の「諸身分」(等族、Stande)が、モスクワにも存在したかという根本問題に、一応の肯定的回答をだした。次いで、平成7年度に貴族のいわゆる「退去権」、すなわち貴族がその君主への勤務を自由に変えることのできる権利、をめぐって検討を加え、これが、モスクワ国家の政策的必要性から導入されたもので、貴族層に真に勤務の自由を保証するようなものではなかった、という結論に達した。 これをうけた本年度の研究は、『千人書』に含まれる、広義の貴族層の分析を行い、いわゆる公の称号をもつ門閥貴族から、諸地方の士族層にいたる広範な勤務人層が、中央権力によって統治に参画させられていることを実証した。 以上から本研究では、モスクワ貴族層が、多様な分野・局面でツァーリ政府の統治に参画し、モスクワが専制国家と一般に言われるのとは大分異なる実態を有していることが明らかにしえたと考えている。 本研究はモスクワ貴族の個人レベルにまで立ち入ったデータのコンピュータ処理という点では、課題を残したが、それはこの研究が未だ我が国では緒についたばかりで、それ以前に成すべきことが余りに多かったことに原因の一端があったと考えている。これは将来的に何とか補いをつけたい。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 栗生澤 猛夫: "ロシアにおける「身分制」および「封建制」の問題" スラヴ研究センター 研究報告シリーズ. 55. 1-18 (1994)
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[Publications] 栗生澤 猛夫: "モスクワ国家における貴族の退去権ないし勤務の自由について" 和田春樹他編 『スラヴの世界・スラヴの歴史』弘文堂. 3-31 (1995)
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[Publications] 栗生澤 猛夫: "いわゆる「戦う教会」のイコンについて" 坂内徳明,栗生澤猛夫 他編『ロシア 聖とカオス』彩流社. 66-87 (1995)
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[Publications] 栗生澤 猛夫: "『千人書』について-イヴァン雷帝の1550年10月の改革案をめぐって-" スラヴ研究. 43. 1-31 (1996)
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[Publications] 栗生澤 猛夫: "ロシア史におけるモンゴル支配の意味について" ロシア史研究. 58. 4-15 (1996)
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[Publications] (栗生澤猛夫)(共著): "世界歴史大系 ロシア史 9-17世紀 1(田中他編)" 山川出版社, XV,449,60(131-277) (1995)
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[Publications] スクルィンニコフ(栗生澤猛夫訳): "イヴァン雷帝" 成文社, 398 (1994)