1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610354
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
林 邦夫 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (50128451)
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Keywords | スペイン / アンダルシーア / 中世 / 土地所有 |
Research Abstract |
前年度までの研究で、以下のような結果を得た。 (1)大土地所有は一度の土地取得では完結しておらず、レパルティミエントで得られた土地が中世末まで変化せずに存続したのではない。(1)では購入、横領によって、(2)では恵与・寄進によって土地取得がなされ、複雑な過程を経ている。 (2)しかしこの過程の結果はじめて大土地所有が形成されたのではなく、過程の最初か、かなり早い段階で大土地所有の規模に達している。したがってその後は大土地所有の増殖・肥大化の過程である。 (3)13世紀に起源を有する大土地所有がかなり見られる。14-15世紀を重視する最近の動向は世俗所領の生成・発展に注目しているが、これは土地所有を含まない裁判領主所領が多かったので再検討の必要がある。 以上の結果を踏まえて、今年度はこれを論文の形で公表することに努め、先頃雑誌に掲載された。したがって、詳細はそれに論じられているわけであるが、ここではその中でも要点として次の点を指摘しておきたい。それは、土地所有と所有者の社会的地位との関係について考えると、土地所有が所有者の社会的地位の上昇に繋がり、今度はその上昇した地位が土地の取得を有利にするというように、相互に因果関係を結んでいたという点であり、これは再征服後のアンダルシーア社会の構造を考える点で重要な視点を与えるものと考えられる。
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