1996 Fiscal Year Annual Research Report
フィレンツェにおける君主政の成立と有力者層の存在形態
Project/Area Number |
06610356
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Research Institution | SHINSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
斉藤 寛海 信州大学, 教育学部, 教授 (00020628)
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Keywords | トスカ-ナ / フィレンツェ / メディチ家 / 君主政 / 権力構造 |
Research Abstract |
「共和政の伝統をもつフィレンツェにおいて、なぜ貴族寡頭政ではなく、君主政が実現したのか」という問題への、次のような解答の展望がひらけた. 15世紀中葉以降、フィレンツェ経済は国際市場における従来の独占的な地位を失い、その有力者層は同市とその周辺の不動産、とりわけ土地への投資を拡大した。他方、同世紀にフィレンツェとその従属都市との間、およびフィレンツェ内部の有力者層と民衆との間で富および権力の格差が拡大したが、同有力者層の経済基盤の動揺によって、この権力構造が不安定化した。有力者層はこれを克服するために、15世紀には自己への権力集中(メディチ派の支配)をはかったが、少数の彼らに国家領域全体の権力が集中する「共和政」では克服できず、ここに彼らの権力を相対化する一方で、延臣化した彼らの社会経済的な既得者を保証する君主政が16世紀には出現した。 3年にわたる当該研究期間に、「フィレンツェにおける君主政の成立と有力者層の存在形態」(研究課題名)に関して、当該科研費による研究に、他の科研費による研究などを有機的に関連させて考察し、上記の展望に集約される一連の研究成果をえた。当該科研費による直接の成果「トスカ-ナ大公国の領域構造」では、地主化した有力者層が君主から騎士位・爵位をえて延臣化すること、君主政下での領域支配の構造を解明した。
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