1994 Fiscal Year Annual Research Report
旧石器時代における石斧の研究 森林環境への適応と技術進化
Project/Area Number |
06610378
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Sapporo International University |
Principal Investigator |
長崎 潤一 静修女子大学, 人文・社会学部, 助教授 (70198307)
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Keywords | 中期旧石器 / 後期旧石器 / 前期旧石器 / 局部磨製石斧 / へら状石器 / 森林環境 |
Research Abstract |
1.北海道各地および東北地方の資料についてのデータ収集によって,東北地方では中期旧石器時代に属する大形石器が多数確認された。これらは縄文時代の箆状石器ときわめて形態的に近似しており,基部が尖る点に特徴がある。中期旧石器時代のこうした石器は,大陸を含めて低地域では発見されていない。つまり日本列島で独自に発達した石器と考えられ,当時の日本列島の自然環境が大陸とどのように違うのかが解決すべき問題となっている。当該石器は,九州地方の中期旧石器時代末の石器群である福井洞穴遺跡の資料中にも見いだされ,列島内では普遍的に存在したものと考えられ,従来の資料の再検討も必要となっている。 2.中期旧石器時代の大型石器から後期旧石器時代の石斧への変遷が,当初考えていたよりも複雑な過程を辿りそうなことが予想された。中期旧石器段階で既に何タイプかに形態が分化しており,このうちの一部が後期旧石器に継続するのか,全般的に継承されるのか,それとも中期旧石器と後期旧石器との間に大きな断絶を考えたほうがよいのか,十分な検討を行う必要が生じた。 3.また前期旧石器段階にも両面加工の大型石器が認められ,これらと中期旧石器段階の石斧の系統関係について考究する必要がある。現在の資料からは十分な推測は難しいが,大型石器は系統が続くのに,小型石器は中期旧石器段階になると一変するという現象に何らかの説明が必要である。人類の進化的側面に原因を求めるのか,環境変化への適応手段に原因を求めるのか,その決定的因子が現段階では不足している。
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