1995 Fiscal Year Annual Research Report
中妻貝塚の多数合葬人骨の考古学的・形質人類学的研究
Project/Area Number |
06610382
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
西本 豊弘 国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 助教授 (70145580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 博文 国立科学博物館, 人類研究部, 研究官 (70209617)
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Keywords | 中妻貝塚 / 縄文 / 人間 / 人骨 |
Research Abstract |
茨城県取手市の中妻貝塚で、縄文時代後期初頭の人骨100体以上がひとつの小さな土坑(直径約2m弱)からまとまって出土した。これまでに、縄文時代の遺跡からは多くの人骨が出土しているが、一つの小さな土坑からこのような多数の人骨が出土した例はない。しかも発掘状況からみて、これらの人骨は、堀之内2式期に、一度にまとめて再埋葬されたものである。従って、被葬者は一集落内に居住した血縁の濃い人々と推測される。古人骨から血縁関係を推定する方法として、歯冠計測値を用いた分析が注目されている。そこで中妻貝塚出土の多数合葬人骨についても、この方法を適用して血縁関係の抽出を試みた。 中妻貝塚で発見された多数合葬墓の人骨約100体のうち歯冠計測値による血縁関係の分析に用いることができたのは29例であった。Qモード相関係数の基準値を0.7とかなり高く設定したが、抽出された組が血縁関係かどうかは信頼性がかなり低いものであった。そこで信頼できる血縁を抽出するため、他の縄文人を併せて比較するという手法を試みた。その結果、中妻貝塚人は相互相関の高い5つのグループに分類されたが、このうち血縁関係を構築している可能性が大きいのは2つのグループに属する人々であった。他の3つのグループについては、血縁関係と確証する十分な手掛かりは得られなかった。従って前者の2つのグループをそれぞれ一つの家系と想定した。 なお血縁関係の分析に用いられた29個体に上顎片側の側切歯を抜歯された個体が5例認められたが、他の被葬者とは血縁が薄い傾向が示唆された。これらが族外の婚入者である可能性が考えられる。また土坑中の各個体の埋葬位置と血縁関係に注目したところ、家系ごとにまとめて再埋葬されたとは考えられなかった。埋葬及び再埋葬は、家系ではなく家族を中心に行われた可能性が推測された。
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