1994 Fiscal Year Annual Research Report
同笵関係にある銅矛・銅戈の検出による弥生時代祭祀構造の復原
Project/Area Number |
06610383
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto National Museum |
Principal Investigator |
難波 洋三 京都国立博物館, 学芸課, 主任研究官 (70189223)
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Keywords | 弥生時代 / 同笵品 / 青銅製祭品 / 銅戈 |
Research Abstract |
今年度は,福岡県春日市小倉新池遺跡出土銅戈27本・銅原町遺跡出土銅戈48本・福岡県筑紫野市隈西小田地区遺跡出土銅戈27本を中心に,一括多数埋納された銅戈の中に同笵品がどのように含まれているかを検討した。まず,小倉新池遺跡出土の24本については,(1)4号=9号=11号=22号=春日市蔵2号,(2)14号=18号,(3)15号=20号,(4)23号=25号,以上4組11本の同笵品がその中に含まれていることが明らかになった。同笵品がこのように一括複数埋納例の中に多数含まれていることが確認できたのは,これがはじめての例である。原町出土銅戈は,本体と修復部分の区別が難しく,同笵品の確認作業が現状では困難になっているが,茎に文様を鋳出した例については,互いに同笵の例がまったく含まれていないことが判明した。なお,原町例には茎に綾杉文を鋳出した例が1例あるが,これが福岡県太宰府市片野山出土銅戈と互いに同笵であることが明らかになった。このほか,原町例には,茎の両面にシカの絵画を鋳出したものが1例あることがわかった。茎のシカの絵画を鋳出した例は筑紫野市隈・西小田地区遺跡出土銅戈にもあり,小郡市大板井出土銅戈の茎の絵画もこれらの例との比較から,シカを鋳出したものと推定できる。このような例の増加によって,銅戈の祭祀においてシカのモチーフが重要な役割を果していたことが推定できるようになった。また,原町出土銅戈に,鋳造後に茎に線刻した例が2例含まれていることが判明した。青銅製祭器に,鋳造後に記号状の線刻をした例としては,荒神谷遺跡出土の銅剣の茎の「×」印が著名であるが,ほかに,福岡県春日市小倉西方遺跡出土の銅矛にも確認しており,このような線刻の意味を考えるための資料が増加した点で重要である。
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