1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610393
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
湯沢 質幸 筑波大学, 文芸・言語学系, 教授 (90007162)
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Keywords | 唐音 / 近世唐音 / 呉音 / 漢音 |
Research Abstract |
今年度は、当初の計画に沿いつつ、主として近世唐音資料の調査を京都以西を中心として行った。ただし、近世唐音の特徴を把握するためには、唐音全般にわたる資料調査、さらには当該資料での呉音・漢音との関係の調査も必要なので、その調査も同時に適宜行った。本年度は、特に新しい資料の発見を目指すというよりは、その資料の資料性、すなわち、その資料は、〈近世唐音が日本漢字音史さらには日本語音韻史の流れの中で、どのように受容されたのか、また、逆になぜ受容されなかったのか〉について、それがどの程度語っているのか、の把握を第一の目標とした。もとより、なお調査は継続中であるが、今年度の調査を通じて、狭義の唐音資料を通してその受容の歴史を明らかにする方向と、唐音をその書の中で実際に用いている文学作品や韻学書等を用いて行う方向との2つがあるとの認識に達することが出来たのは、大きな収穫であった。両者の総合が理想であるが、本研究は「基礎的研究」であることを鑑み、さし当たってはいずれか一方を徹底的に解明し、本研究の後にこれを基盤として更なる発展のためにもう一方の解明と両者の総合的解明を試みるべきであろうと考えている。なお、本研究が日本漢字音史研究の一部をなす過程において、唐音と密接不可分の関係にある呉音・漢音史について論究することが出来たのも本年度の成果の一つである。来年度は、主として京都以東を中心にして調査をさらに進めつつ問題を絞り込み、呉音・漢音受容史と関わらせながら近世唐音受容史の問題を解明し結論を出したいと考えている。
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