1994 Fiscal Year Annual Research Report
『明性寺本仮名書き往生要集』を中心とする往生要集訓読史の国語学的研究
Project/Area Number |
06610401
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
西田 直敏 甲南女子大学, 文学部, 教授 (20000565)
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Keywords | - |
Research Abstract |
本年度の研究は、主題である明性寺本仮名書き往生要集の書誌学的国語学的研究と往生要集訓読史研究のための明性寺本を中心とする往生要集諸本(写本版本.漢文の往生要集と仮名書きの往生要集)の写真による収集と訓読の校本作成であった. 1 明性寺本は箱書に「蓮師御筆」とあり,奥書の「享徳三年(1454)」は蓮如が本願寺第八世に就任する前の年号であるから年代的に蓮如自筆としても矛盾はない.本年度明性寺本全巻を写真によって調査した結果,実は一筆で書かれたものではなく,漢字片仮名の書き癖の精査によって三人の手で書かれていることが明かになった.蓮如自筆の部分があるとすれば蓮如の確実な筆跡と対比して確定すべきであるが,本年度はそこまでは行わなかった.本文には書写の過程で脱語,脱文,重複書写等に気づいて補入訂正した箇所が相当に多い.このことから仮名書きの原本があってそれを書写したものと考えられる。後の手かと思われる書き入れ,異本の訓みを示した箇所も相当数に上る。書写の原本,異本については現在のところまだ明かになしえない. 2 明性寺本は全ての漢字に訓み仮名がつけられているので,その語を音読した訓読したかが明白である.往生要集は成立した平安時代から訓読されたと推定され,平安時代書写本にはヲコト点仮名点がつけられている.経文のように一斉に読誦されることは無かったと思われるので、語によって音読訓読のゆれがある.明性寺本では右に音読,左に訓読を示したもの,本文で訓読しているものに後に音読の形を書き添えたところもある.往生要集成立以後の訓みの史的様相を明かにするためには一語一文毎の校本作成が前提となる.本年度の作業結果は将来公刊したいと思っているが,次年度の研究成果報告書に留頭の一部(大文第一厭新穢上の地獄の部)を公表する予定である.
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