1996 Fiscal Year Annual Research Report
唐通事と日本近世文字・語学の研究-日中比較文学実践史-
Project/Area Number |
06610407
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
若木 太一 長崎大学, 教養部, 教授 (40071998)
|
Keywords | 唐通事 / 風説書 / 俗語辞書 / 翻訳 / 唐話辞書 / 海外情報 / 詩作 / 読本 |
Research Abstract |
平成6年度から平成8年度に至る3年間において、私は長崎の唐通事たちが、日本の近世文字、語学に及ぼした顕著な活動と影響について以下の諸項について調査研究を行ない、報告をした。読本などへの影響については概要を記すにとどめた。 1)唐通事の機構・職制とその歴史について 唐通事は慶長8年(1603)に来泊唐人馮六を長崎奉行小笠原一菴が任命した時に始まる。寛永17年(1640)に大通事、万治元年(1658)に小通事、その後稽古通事などの機構・職制が整備されていく過程を記した。すでに『譯司続譜』があり、これを基礎に概要をまとめた。 2)唐通事の伝記とその事歴について 唐通事は唐船風説書の翻訳などの情報活動や実際の貿易業務にかかわり、通訳業務を行なった。彼らは文化人としての一面を持ち、詩作や書に興じている。彼らの文字・語学についての事歴を追跡し、代表的な大通事について調査した。 (a)官梅道栄の詩作活動とその家系 (b)劉宣義、劉素軒親子の詩作活動と家系 (c)岡嶋冠山の唐話学と唐話辞書の編集と流布 (d)東京通詞魏氏の事歴と家系 3)唐通事の辞書について 唐話辞書の編集は享保時代前後に盛んに行なわれているが、出版された冠山系辞書、稗史、演義小説読解用の字彙が流布されている。その他実用的な辞書類が編集され、写本で伝わっている。『東京異詞相〓解』及び『俗語解』(一部)その他を資料として報告書に収録した。報告書は本年度3月刊の予定である。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 若木太一: "東京通詞魏氏の家系-魏五左衛門龍山を中心に-" 長崎大学教養部紀要. 第37巻3号. 1-16 (1997)
-
[Publications] 若木太一: "西鶴の翻案小説-『棠陰比事』と『本朝桜陰比事』-" 古典文学研究. 第5号. 74-82 (1996)
-
[Publications] 若木太一: "聖地の闇-<仏法僧>の形象-" 読本研究. 第10輯下. 238-243 (1996)
-
[Publications] 若木太一: "出島の生活と文化" 姫野順一編『海外情報と九州』(九州出版会)所収. 151-175 (1996)
-
[Publications] 若木太一: "向井元升事略-入洛前後-" 雅俗. 第3号. 25-36 (1996)
-
[Publications] 若木太一: "劉素軒の生活と文事-『長崎先民伝』人物誌-" 国語と教育. 第19号. 95-99 (1995)