1994 Fiscal Year Annual Research Report
現代中国における「諷刺芸術」の研究-中国漫才(相声)とロック(揺滾音楽)における諷刺の諸相
Project/Area Number |
06610422
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
弓削 俊洋 愛媛大学, 法文学部, 助教授 (20200868)
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Keywords | 相声 / 揺滾音楽 / 芸能 / 諷刺 / 崔健 / 唐朝 / 何勇 |
Research Abstract |
中国漫才「相声」は、中国において最も人気のある芸能であり、また崔健に代表される「揺滾音楽(ロック)」も、「若者文化の頂点」に君臨すると言われるほどの支持を得ている。こうした芸能はその「大衆性」ゆえに、小説や詩など「正統」文学では見えにくい中国人の本音が表現されている場合が少なくなく、これらの作品の分析を通じて、中国人の精神的特質も、より具体的に明らかにすることができる。しかしその一方で、相声や揺滾音楽に関する研究はなお不十分であり、資料的な整備すら満足に行われていない、というのが現状であった。 こうした状況を踏まえ、平成6年度はまず相声と揺滾音楽に関する以下のような基礎的作業を行った。 (1)相声に関しては、中華人民共和国建国後に出版された関係文献名、専門雑誌『曲芸』掲載の台本・評論等の題目、及び実演のテープ・ビデオ名のコンピュータ入力を進め、日本の研究機関に未収の資料を除き、ほぼ入力を終了した。 (2)揺滾音楽に関しては、この一年特に日本で多くの資料(CDや雑誌・新聞記事)が発行されたという条件も活用しながら、崔健・何勇・唐朝楽隊などの資料の収集とコンピュータ入力を行うと共に、昨年度に公表した「崔健年譜」「崔健作品目録」の補正を行った。 次に、「特大新聞」「虎口遐想」などの「諷刺相声」を新たに発掘して分析を進めた結果、「荒唐無稽」「魔術的リアリズム」などの中国での評価が不十分かつ不適切であり、実は共産党政権への辛辣な諷刺という点から高く評価すべき作品であることが明確になった。(なおこの研究成果は平成7年度に公表される。) さらに、崔健の最新作品集『紅旗下的蛋』及び何勇や唐朝楽隊の作品の分析を行った結果、ロックという音楽を通じて諷刺を試みる関係者の数が想定していた以上に多く、揺滾音楽が諷刺の重要な武器となっていることが改めて確認され、さらにそれは「ワールドミュージック」として注目されている非欧米音楽の有力な一翼を担っていることが明確になった。(この点についての研究成果も平成7年度に公表される。)
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