1994 Fiscal Year Annual Research Report
英語・日本語文法の獲得における束縛現象とその理論的意義に関する研究
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06610442
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大津 由紀雄 慶應義塾大学, 言語文化研究所, 教授 (80100410)
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Keywords | 束縛理論 / 文法 / 文法獲得 / 普遍文法 |
Research Abstract |
本研究は英文法と日本語文法を対象としてその束縛理論の獲得過程を調査し、その調査結果が文法理論および文法獲得理論に対してどのような意味を持つのかを検討することを目的とするものである。 本年度の研究は束縛現象の獲得に関連する諸問題のうち、(a)普遍文法と経験の相互作用および(b)文文法と談話文法の接点に関する問題を取り上げた。具体的調査としては、英文法を獲得中の3歳児-6歳児約40名を被験者として実験を行った。その結果、つぎの点が明らかとなった。 1 照応詞の分布については、英語の照応詞がどの語であるのかを学習するだけでよく、3歳児でもおとなと同質の判断が下せる。 2 代名詞類のうち同一指示的に用いられるものの分布については、談話文法も関与しており、その部分の発達が比較的遅いことから、おとなと同質の判断が下せるようになるのも遅れる(5歳児でも判断がゆれる)。一方、束縛変項として用いられる代名詞類の分布については普遍文法に含まれる束縛理論が関与するだけなのでその獲得は早い。 文法獲得において普遍文法が重要な役割を果たしていることが確認されたが、同時に経験も普遍文法に含まれる諸原理を活性化させる上で不可欠であることが実証された。また、文文法と談話文法の区別が文法獲得を考えるうえでも重要であることも実証された。 来年度は、日本語文法に関する調査と理論的考察を行う予定である。
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