1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610443
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
杉岡 洋子 慶應義塾大学, 経済学部, 助教授 (00187650)
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Keywords | レキシコン / 語彙的意味論 / 格助詞 / 心理述語 / 語形成 |
Research Abstract |
本研究では、述語の語彙的意味構造が語形成や統語構造にどのように反映されているかを、日本語を中心として検討し、他の言語のデータと比べることを主眼としている。本年度は、心理述語や自動詞・他動詞の表層の格助詞の現れ方を中心としてデータの収集およびその分析を行ってきたが、その結果として次のような新たな知見とさらに解明するべき課題が明らかとなった。 1.日本語には格表示において異なる2種類の心理動詞が存在するが、その語彙的意味構造における述語の項の意味役割は、英語の心理動詞の分類においてPesetsky(1990)らによって提案された意味役割階層を使うことによってより適切に分析されるということが判明した。また、日本語の心理動詞においては、外項の有無が形容詞との交代や受身文の派生の可能性を左右しているという事実がわかった。この点は意味構造における外項・内項の区別を含めて、さらに統一的な説明ができると思われるので、現在考察中である。 2.日本語の動詞には意味的には自動詞でありながら、目的格を付与するものが存在する。これらの意味分析を行った結果、目的格の付与と同志の有意志性には明らかな相関があることが判明した。この点は、英語やイタリア語などの自動詞・他動詞の比較の中で指摘されているいわゆる「Burizioの一般化」の見られる現象のひとつとして、意味構造からのより普遍的な説明が必要であり、その方向で現在分析を続行中である。 3.意味構造の重要な要素であるアスペクトの中心的な概念であるtelicity(有限性)が、動詞の格付与に深く関わっていることが、英語やヨーロッパの言語の研究で現在明らかになりつつあるが、日本語においても特に起点やゴールを表す格表示の現れ方に平行的な現象が見られることが判明した。この問題については、さらなるデータの検証と共に意味構造における有限性の記述形式についての考察が必要である。
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