1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610443
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Research Institution | KEIO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
杉岡 洋子 慶應義塾大学, 経済学部, 助教授 (00187650)
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Keywords | ルキシコン / 語彙的意味論 / 複合語 / 意味拡張 / 動詞分類 / 語形成 |
Research Abstract |
本研究では、述語の語彙的意味構造が語形成や統語構造にどのように反映されているかを、日本語を中心として検討し、他の言語のデータと比べることを主眼としている。前年度は、心理述語や自動詞・他動詞の表層の格助詞の現れ方を中心としてデータの収集及びその分析を行ったが、本年度はその成果の応用して、意味構造から語形成(特に複合語形成)への投射と、語彙的意味構造における意味拡張現象の比較言語学的研究を行い、その結果として次のような新たな知見が明らかとなった。 1.日本語の動詞をベースとする複合語は、英語のいわゆるdeverbal compoundsと比べてその意味や用法が規則性を欠くとされ語彙的なものと考えられてきたが、本研究では複合語のベースとなる動詞の語彙的意味構造をくわしく調べることによって、その派生名詞形を主要部とする複合語の振る舞い(特に動作名詞として用いられるか否か)が予測できること、また複合語の第一要素に現れる名詞の意味役割への制限も、語彙的意味構造レベルにおける同種の制限から整合的に説明できることが明らかになった。さらに今まで未解明であった英語の同種の複合語との差異も意味構造のレベルで説明が可能になった。 2.語彙的意味構造における意味拡張、または語彙的埋め込みと呼ばれる現象を比較言語学的に調べた結果、英語には下記のような種類の拡張現象が見られるのに対して、日本語ではこれらが見られないことが明らかになった。フランス語等もこれらの現象において日本語に近いという報告があり、現在検証中である。 (1)「食べる、eat」等において含意された内項の意味構造における削除 (2)動作動詞(走る、run等)において目的を示す項が意味拡張によって加えられる現象 本来受益役割を選択しない動詞が意味拡張によって与格によってそれを表す現象
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