日系アメリカ文学と太平洋戦争-ヒサエ・ヤマモトを中心に-

1995 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 06610450
• Research Institution: Ritsumeikan University
• Principal Investigator: 山本 岩夫 立命館大学, 法学部, 教授 (30066675)
• Keywords: ヒサエ・ヤマモト / 日系アメリカ文学 / アジア系アメリカ文学 / 太平洋戦争 / 強制収容所 / 日系アメリカ人二世 / 1930年代文学

Research Abstract

1.昨年度に引き続き1930年代および1940年代初期(太平洋戦争開始まで)のヒサエ・ヤマモトの作品および関連記事の収集を進め、新たに日系二世文化・文芸誌『カレント・ライフ』(1940-42)から11点を収集できた。そして『加州毎日新聞』および『カレント・ライフ』に掲載された143点すべてについて要約をし、『ヒサエ・ヤマモト作品目録(1)』を作成した。
短編小説"To You, Dear Graduate!"(『加州毎日新聞』1938年7月24日)は今回初めて発掘されたヤマモトの作品である。17歳の時に書かれたが、これは太平洋戦争以前に発表された唯一の短編小説であり、彼女の文学的力量の大きさを示す作品となっている。
3.1940年、1941年における彼女のエッセイには、世界の動き(欧州での戦争、日中戦争など)や日系社会の動き(二世の徴兵問題など)への強い関心を示すエッセイが多くなっており、それまでの皮肉とジョークに彩られたエッセイとは対照的である。不穏な世界の動向が落とす陰を若い二世女性の作品の中に明白に読むことができる。
4.太平洋戦争後のヤマモトの作品は57点(1991年まで)以上と判明したが、『羅府新報』等の資料(マイクロスフィルム)の所在が国会図書館などに限定されているので、それらの収集は十分できなかった。
5.ヤマモトの戦前の作品が極めて多数あり、かつこれらの作品の研究が今まで日米両国いずれにおいてもなされていない点を考慮して、今回は専らこの時代における彼女の文学に焦点を当てることとした。太平洋戦争時および戦後の作品については、作品の収集を含めて、引き続き取り組んでいきたい。