1994 Fiscal Year Annual Research Report
パフォーミング・アーツにおける比較文化的女性論の研究
Project/Area Number |
06610451
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
池内 靖子 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (80121606)
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Keywords | 第一波のフェミニズム / 「新しい女」論争 / 「新劇」運動 / 女 / 男の非対称性 / マルチカルチュラリズム / ポスト・コロニアル・ワールド / パフォーマンス・テクスト / 演劇的な知 |
Research Abstract |
本年度の研究計画として、三つの課題を設定していた。1.近現代の英語圏の女性劇作家の作品、資料の収集と分析。特に、19世紀後半から20世紀初頭の第一波のフェミニズムとの高揚と関係する作品や資料。2.日本の近現代の女性劇作家の作品、資料の収集と分析。特に、明治・大正期の女性解放運動、「青踏」グループと演劇表現活動の関連資料。3.「第3回国際女性劇作家会議」('94,7.4-7.10,オーストラリア、アデレ-ド)に参加し、各国の女性演劇人と交流し、資料を収集する。以上の課題のうち、資料収集については、いくつかの作品や、全集ものが残っているが、ほぼ主要なものを集め切ったといえる。収集した資料の解読と分析は来年度の継続課題となる。その場合、「青踏」グループの「新しい女」論争と絡めて、近代的な「新劇」運動における「女優」誕生を女性の表現の可能性として中心的に論じる必要がある。早稲田演劇博物館で、近代的な新劇の女優第一号の松井須磨子に関わる資料を集めることができたので、明治・大正期に期待された「女優」と「新しい女」像との関係を分析し論文にまとめる予定である。第3の課題については、「国際女性劇作家会議に参加して」という参加感想記を、『朝日』新聞('94,10.28,)夕刊の文化欄に掲載した。またさらに論考を深めたものを『立命館大学産業社会学部論集』の30周年記年号に掲載した。演劇と人類学がテーマ的にも方法論的にも接近するなかで、古代祭祀の発見や復元、再生が現代にどういう意味をもつのか、とりわけ古代祭祀における「女/男の非対称性」をどう読み解くか、また、「ポスト・コロニアル・ワールド」といわれる世界で「マルチカルチュラリズム」は現実にはどう展開しているのか、というようなパフォーマンス外の問題もパフォーマンス・テクストに含み込んで考えることが、現代の新たなパフォーマンスなり、「演劇的な知」を生み出すことになる、と論じた。
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